赤ちゃんを見ると、思わずやらずにはいられない、「いないいないばあっ!」。赤ちゃんがそれに反応して笑ってくれると、ホッコリとした気持ちにもさせられて、何度でもやってしまいますよね。では、生後どれくらいの期間を経ると、このような行為に反応するようになるのでしょうか?

■やみくもにやっても意味がない!? 「いないいないばあっ!」

赤ちゃんをあやす手段としてポピュラーな“いないいないばあっ!”ですが、実は生後およそ半年が経った赤ちゃんでないとほとんど反応しないのです。その理由について、赤ちゃんの成長のステップを一つずつ確認しながら、紐解いていきましょう。

生まれてまもない赤ちゃんは耳は聞こえているものの、視力が完全ではありません。また記憶力も未熟なため、“いないいないばあっ!”をしても、ほとんど反応することがないのです。

そんな視力についても、大体生後2〜3カ月後からハッキリと見えてきます。ゆっくりした動きなどは、目で追えるようになります。よって、単純なあやしに対しては笑うようになるわけです。これで、めでたく“いないいないばあっ!”を認識してくれるのかと思いきや、目の前から存在が見えなくなったときに、それが「消えてなくなる」のか「隠れている」のかという違いについてはこの段階でも理解できないため、残念ながらまだ反応はしません。

そして、4カ月ごろになると、ようやく自分と他人の存在を認識し始めます。また、何かを考えるときに、その物事の関連情報を素早く取り出せるよう、一時的に記憶しておく能力も発達していきます。…
これらの能力を発揮しはじめるのが生後5〜6カ月ごろであり、生後半年ほどすると“いないいないばあっ!”を認識し反応すると言われている理由は、ここにあります。赤ちゃんは、このタイミングでようやく、“顔を隠しても、その手の向こうに人がいる”という認知をし出すのです。

■赤ちゃんが泣き叫ぶのは成長の証!?

生後半年前後で赤ちゃんに現れる認知能力を、“物の永続性”と言います。これは、対象物が目の前から消えても、どこかに存在し続けると認識することで、スイスの心理学者であるピアジェが提唱した発達段階理論の一つ。

この“物の永続性”、実は赤ちゃんの発達段階において非常に重要なものと言われており、これを理解することによって、抽象的な思考や記憶という重要な認知能力を身に付けることになります。人間の予測、想像する力というのは、すでにこの時期から養われているのです。

親が赤ちゃんを抱っこしているところに親戚が“私にも抱っこさせて!”とバトンタッチをして、その隙に赤ちゃんを預けた親がトイレにでも行こうものならすぐに赤ちゃんが大泣きするシーン。皆さんの中にも経験したことがある人もいるかもしれませんが、この状況も、親が視界から消えてもどこかにいると認識している証拠なのです。親の姿が見えなくなってもどこかに存在し続けると理解しているからこそ「泣いたら親が戻ってくる」と、赤ちゃんは泣き叫んでいるわけですね。

■子どもの発達について多角的に学ぶことができる学問、それが児童学!

子どもたちも一人ひとり、豊かな個性を持っています。…
そして、その個性をいい方向に伸ばしてあげるためには、子どもの発達段階において、親や教育・保育に携わる大人たちが、さまざまな経験をさせてあげることが大事なのです。

こういったプロフェッショナルを育てるための学問が、「児童学」。乳幼児・児童の発達、教育、健康と赤ちゃんを取り巻く周囲の環境との関わりをしっかりと分析・研究し、彼らの発達をサポート・貢献する学問です。心理学、保健、表現などあらゆる角度からアプローチし、楽しいながらも難しく、何より大きな責任も伴う“小さな子どもの教育”のよりいいあり方を追求していきます。保育士、幼稚園教諭、ベビーシッターなどを目指している人はもちろん、社会教育主事(任用)や認定心理士などを目指している人も、児童学について、ぜひ興味を持って調べてみてください。

また、「将来の目標はまだ定まっていないけれど、子どもが大好き!」という人にとっても、児童学は有意義な学びとなるかもしれません。勉強し、知識が増していくなかで、人生の大きな方向性が見つかるかもしれませんよ!


引用元:
赤ちゃんを見ると思わずやりたくなる、「いないいないばあっ!」の秘密(excite)