働くママにとって、子どもの睡眠はもちろんのこと、自分自身の睡眠時間の確保はとても大切ですよね。でも夜泣きが原因で睡眠不足に陥っている、あるいは寝かしつけがうまくいかず、寝不足に陥っているママも多いのではないでしょうか。特に0〜3カ月の低月齢の赤ちゃんの場合、抱っこで寝かしつけてもベッドや布団に下ろした途端、泣いてしまうという話をよく聞きます。こうした寝かしつけの問題は「セルフねんねの練習」によって改善されるケースが多いと医師・小児睡眠コンサルタントでChild Health Laboratory代表の森田麻里子先生は言います。今回は主に0〜3カ月までに起きる夜泣きについて、そして「セルフねんねの練習」についてお届けします。

(上)子どもの夜泣き 原因の一つは睡眠不足

寝室環境をきちんと整え、良い睡眠習慣を教える

Q1.0〜3カ月、睡眠サイクルを整えるには?

 前回、0〜3カ月の子どもの夜泣きは「睡眠不足や生活リズム・寝室環境が整っていないことが原因」であることが多いとお伝えしました。

 ところで子どもは、いったい何時間眠れば「寝不足ではない」のでしょうか。森田先生は諸説あるとしながらも「0〜3カ月児は14〜17時間くらい。これが4カ月〜12カ月未満だと12〜15時間、1歳〜2歳で11〜14時間になっていきます」(森田先生、以下同)と言います。

 「新生児は体内時計や睡眠サイクルが未熟なため、昼夜問わず寝たり起きたりしています。胃の容量が小さく1度に飲める母乳やミルクの量が限られているので、少量飲んではすぐ眠り、またすぐにおなかが空いて泣くという特徴があるのです」

 新生児のうちは、2時間ごとの授乳もよくあるので夜中3〜4回起きるのは一般的です。その後1カ月半から3カ月の間に夜まとまって寝るようになり、それ以降、早くて6カ月、遅くて9カ月ごろまでは夜1〜2回の授乳が普通になります。また徐々に、空腹以外(おむつがぬれている、刺激が多すぎて疲れた、刺激が少なすぎる、など)でも泣くようになっていきます。

 まとまって寝る時間帯ができても、最初のうちは夜にまとまって寝るとは限らないそう。3カ月頃までに生活のリズムを整えることで昼夜のリズムがしっかりとできてきて、夜にある程度まとまって寝るようになるといいます。

 「まれに早い時期から夜通し寝る子もいますが、多くは夜間起きることを想定したうえで、夜19時に寝たら朝6時には起きるといった1日のサイクルを整えていくことで、しっかり睡眠が取れるようになります。そのためには寝室環境をきちんと整え、良い睡眠習慣を教えることが大事です」

 寝室環境で大切なのは、まずは光を遮ること。「夜中も明るい部屋だと眠れないので、外からの光が入りにくくなるように遮光カーテンを使ったり、エアコンや空気清浄機のランプが明るすぎる場合は隠したりするといいでしょう」。また、子どもをあやすのに使うメリーなどは、夜間は外したりカバーをかけたりしておいたほうがいいそうです。「おもちゃや絵本などは子どもを刺激してしまいますので、なるべく目に入らないようにするといいですね」

 では良い睡眠習慣を教えるにはどうしたらいいでしょうか。
良い睡眠習慣を教える3つのポイント


良い睡眠習慣を教える3つのポイント

(1)寝る前のルーティーン(儀式)をつくる
(2)起きたまま布団(ベッド)に寝かせる
(3)泣いてもすぐに反応しない

 上記の「寝る前のルーティーン」は、例えばカーテンを閉めて暗くしたら眠る時間にするなど、子どもが「これをしたら寝る時間」と分かるような儀式をつくることです。これは、多くの人が実践できているかもしれません。

 一方、難しいのが「起きたままベッドや布団に寝かせる」というもの。月齢が低いうちは特に、授乳しながら、あるいは抱っこしながら背中をトントンしたり、歌を歌ったりして、完全に寝てから布団に置く人が多いのではないでしょうか?

 「でもそれだと、“自分で寝る力”が付きにくく、置いてもすぐ泣いてしまう可能性が高まりますし、夜泣きの原因にもなります」と森田先生。

生後3カ月くらいまでは、普通に起きていられるのは1〜2時間

 では0〜3カ月でできる、「セルフねんねの練習(※)」とは何でしょうか。森田先生は診察時、「お昼寝をちゃんとさせることをお願いしています」と言います。

 「低月齢の子は1度起きた後、落ち着いた精神状態で起きていられる連続の時間は最大でも2時間と言われています。つまりそれを超えてしまうと、眠くて疲れ過ぎてしまう可能性が高いんです」

 3カ月児くらいまでは、ご機嫌にニコニコしていたとしても、1時間、2時間と時間が経つにつれて実は疲れてしまうのです。「疲れたら眠ればいいのですが、低月齢の子は眠るのが上手じゃないんですね。だから眠れなくて、また疲れてしまい、ぐずるようになります」

 つまりさっきまではご機嫌だったからと楽しいことをして笑わせようとしてしまうと逆効果ということ。機嫌が悪くなって寝付けなくなると、それが睡眠不足を招くという悪循環にもつながるわけです。

 「ぐずったり泣いたりする前に、子どもはサインを出しているものです。例えば少し遠くを見るような目をしたり、急におもちゃに興味をなくしたり、ぬいぐるみを与えたら一瞬ニコッとしてもすぐに飽きてハイテンションでイライラしている動きになったり。抱っこしたら胸に顔を押し付けてきたり、顔や耳を引っ張ったり。これらは眠いよというサインです」

※寝かしつけのくせが原因の夜泣きが起こるのは早くて4カ月、通常6カ月以降で、4〜6カ月を過ぎて環境を調整しても夜泣きが改善しない場合に「ねんねトレーニング」(●●しないと眠れないというクセを取る方法)を行うため、ここでは3カ月までの自分で寝る力をつける練習を「セルフねんねの練習」としています。
●●しないと眠れない、というクセをつけない

Q2.寝かせるときに「何もしない」練習とは?

 こうしたサインに気付いたら、背中をトントンしたり、歌を歌ったりなど、眠気を誘ってあげるのだといいます。

 ただし注意したいのが寝かせ方。森田先生は「昼寝時は難しいのですが」と前置きしながら「授乳して体力がなくてそのまま入眠という新生児期はやむを得ないのですが、少し体力が付いてきて、授乳後も起きていられるようになったら、おっぱいをあげたまま寝かせるといったことは、徐々に控えていくといいと思います」といいます。

 「大人は子どもがベッドや布団に入って、“眠くなるまで”だけを手伝うようにする必要があります。例えば授乳は授乳で完結させて、そのあと寝かせる。あるいは背中をトントンして眠気を誘っても、そのまま抱っこの状態で寝入らせず、必ずベッドや布団に置いてから眠りにつかせるようにします。タイミングが難しいかもしれませんが、寝るときは何もしないようにすると、一人で寝る力が付いてきますよ」

 これはもう少し大きくなってからの寝かしつけにも影響してくるそうで、「トントンしないと眠れない」など●●しないと眠れないというクセが付くことで、子どもが一人で寝る力が育たなくなってしまうというわけです。

 また、「子どもは夜中に目を覚ましてしまったりしますが、その時に無為に相手をしないほうがいいんです」とも。「例えば2カ月の子が夜中にフニャフニャと泣いたとしても、それは単に寝ぼけているだけという可能性もあるんです。大人でいうところのレム睡眠(脳は起きていて体が眠っている睡眠)の状態で、放っておくとそのまままた寝入ることもあります」

 夜中に泣いてもあえてすぐに抱き起こさず、少し様子を見るということができるようになると、子どもも親も、ぐっすり眠る時間が増えていくといいます。
乳幼児の添い寝には乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクも

Q3.添い乳、添い寝はしてもいい?

 また成長曲線を外れていて発達に問題あるような場合は、夜中も授乳をどんどんしなければなりませんが、成長曲線に問題がなく元気であれば、1カ月を過ぎた子が1時間おきにおなかがすくということは考えにくいそう。3カ月を過ぎて夜中の授乳が3回を超える場合は、授乳以外の要因を探ってみたほうがよいそうです。

 「例えば騒いだら授乳する、ということをしていると、その一瞬は泣き止んでも、子ども自身の本当の不満が解消できていないからまた泣きますよね。“その場しのぎ”は夜泣きの要因を作り出してしまいかねません」

 寝ながら授乳をする「添い乳」や子どもがお母さんの存在を感じやすい「添い寝」は、お母さんにとってもラクな面はありますが、長い時間しっかり寝るうえではあまりおすすめではないと森田先生は言います。

 「添い寝をするにはお母さん(お父さん)が就寝する時間に合わせる必要が出ますし、子どもを寝かせるためだけにベッドや布団に入ってまた起きて何かをするとなると、お母さん(お父さん)の睡眠の質はどうしても落ちてしまいますよね。なにより乳幼児の場合、乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクが指摘されています」。リスク回避のためにも、できれば1歳までは子どもは別のベッドで眠るのがよさそうです。

 もう一つ、別に眠ることで「お母さんが十分な睡眠を取れるようになり、子どもの睡眠が確保されやすくなる可能性がある」というメリットも。

 「メラトニンという睡眠ホルモンは、生後3カ月過ぎから分泌されるようになりますが、母乳を通して赤ちゃんにも移行すると言われています。ですので母乳の場合、お母さん自身も規則正しい生活を送ることで、赤ちゃんに十分なメラトニンを与えることができる可能性が指摘されています」

3カ月頃までに、体内時計を整える

 その他、生活サイクルを整えるために、体内時計を整えることも大切です。

 「もともと体内時計のサイクルは24時間よりすこし長く、光を全く浴びずに生活していると、遅寝・遅起き方向にずれていきます。また、現代の生活では夜寝る前まで明るい電灯の下で過ごしますが、夕方に光を浴びることも、体内時計を遅寝遅起き方向にずれさせてしまいます」

 体内時計を24時間の地球のリズムに合わせるためには、午前中に強い光を浴びるのが大切です。曇りの日でも、日光は電灯よりずっと強力なので、日光を浴びるようにするとよいでしょう。

 「ただし、睡眠を十分とることが大切なので、就寝時間が遅めなら起床が7時以降になっていてもいいと思いますが、生後3カ月頃には起床・就寝時間を一定にすることをおすすめします」

 もちろん、体調不良はないか、湿疹があってかゆかったりしないか、便秘や中耳炎はないかなど、健康状態は睡眠に大きな影響を与えます。また、予定日よりも大幅に早く生まれたという場合、成長曲線を出産予定日からの月数によって数える修正月齢で考える必要があります。サイクルがなかなか整わないという場合、こうした側面も見直してみる必要があるでしょう。



引用元:
抱っこで寝かせると“自分で寝る力”が付きにくい(日経デュアル)