妊娠中は心も身体もさまざまな変化が見られます。特に初めての妊娠のときは、喜びやうれしさに胸がいっぱいになるのはもちろんのこと、わからないことや身体の変化に戸惑い、不安やストレスを抱えている妊婦さんも多いのではないでしょうか。

筆者は歯や口周りの情報を「ムシバラボ」というサイトで発信しており、その中でも紹介していますが、妊娠中はお口の中も変化が現れる部分の1つです。

妊娠中のお口や歯のトラブルとは?

妊娠中の女性は虫歯が増えやすくなります。理由は4つあります。

@唾液の量が減る

A食べ物の好みが変わり、虫歯の原因になる甘い物や酸っぱい物を食べたくなる

Bつわりがひどくて歯磨きができない

C1日中、何かを口にして、お口の中が虫歯になりやすい状態が続く(食べつわり)

同時に歯ぐきが腫れたり、出血しやすくなったりします。歯肉炎や歯周病です。理由は大きく次の3つです。

@つわりで歯磨きができず、汚れが残っている

A妊娠中は歯周病菌のエサとなる女性ホルモンが約7倍増える

B歯周病になりやすい30代女性の妊娠が増えている。

妊娠期にも歯科治療は行えます。必要であれば治療は積極的に行ったほうがいいでしょう。妊娠中は普段よりも虫歯や歯周病になりやすいので、妊娠がわかったら一度歯科医院でご自身のお口の中の状態を確認することをおすすめします。母子手帳にも歯や歯ぐきの状態を記録する歯科検診の欄があります。

赤ちゃんが生まれた直後は、ご自身のことには手が回らなくなってしまいます。お母さんやお父さん、周りの方のお口の状態が赤ちゃんの虫歯にも関係しますので、妊娠期に正しい知識を身に付けておくことも大切になります。

妊娠中の虫歯治療への疑問

妊娠中の虫歯治療への疑問について、よく寄せられる質問にお答えします。

(1)妊娠中の歯科検診のタイミングは?

妊娠がわかったら早めの受診をおすすめします。妊娠初期の体調がすぐれない時期や、 妊娠後期は診療中の椅子を横にしている体勢がつらいと思いますので、無理は禁物。妊娠4〜5カ月目で検診を受けると、もし虫歯や歯周病の治療が必要な場合
でもすぐに治療を開始することができます。お住まいの地域によっては、妊婦さんの無料歯科検診を行っているところもあります。

(2)妊娠中に虫歯などの歯の治療をしてもいいの?

安定期(妊娠5〜8カ月)であれば、虫歯も含め歯科治療を行えます。必ず歯科医師に妊娠していることをお伝えください。

(3)妊娠中に歯のクリーニングはしたほうがいいの?

もちろん、してください。丁寧に磨いていても磨き残しがあるものです。妊娠中は少しの汚れで歯ぐきが腫れてしまいます。ご自身で取り除けない汚れは歯科医院で取ってもらいましょう。1〜2カ月のペースで通えると理想的ですが、体調に無理のない範囲で構いません。出産直前まで通われる人もいます。

(4)妊娠中にレントゲンを撮っても大丈夫なの?

撮らなくても治療は行えます。妊婦さんはレントゲン写真を撮らずに治療をすることが多いです。歯科用のレントゲンは数種類ありますが、基本的に首から上の部分や確認の必要な歯のみの撮影になるので、お腹の中の赤ちゃんには影響はありません。

撮影するときは鉛の防護エプロンをつけて放射線から守ります。最近の歯科用のデジタルレントゲンの被ばく量は、従来の10分の1と言われています。心配な人はレントゲン写真を撮らずに治療することもできるので、歯科医師に相談するといいでしょう。

(5)妊娠中の麻酔は赤ちゃんに影響ないの?

影響はありません。歯科用の麻酔は局所麻酔といって、部分的に効くものなので、安定期であれば使用しても問題はありません。麻酔を使いたくない人は、麻酔をしないでできる範囲で治療を行います。また、担当の産婦人科医と相談しながら治療を進められますので、不安なことがあれば歯科医師に伝えていただくといいでしょう。



引用元:
歯科医が警告!「妊娠」と「虫歯」のコワい真実(東洋経済オンライン)