子育てネットワークゆるいくを立ち上げて、5年目になります。団体の活動の中に、「赤ちゃんがいく!」という事業があります。「みんなの笑顔が一番」をスローガンに、赤ちゃんとその親が老人ホーム・デイサービスなどに出向き、赤ちゃんとふれあう時間を提供する事業です。

 この活動では、毎回感動的なドラマが生まれます。ドラマの主人公は、そこに集まった人全員です。

 赤ちゃんを笑顔で迎えてくれたおばあちゃんは、赤ちゃんと楽しく遊んだ後に「赤ちゃんがいたら大変だろう?」とママにも声をかけてくれました。「ありがとうございます。でも、楽しいです」って答えたママは、そのおばあちゃんの手を優しく握り、「おばあちゃんも元気で長生きしてくださいね」って。そのおばあちゃんは、涙ぐみながら「ありがとね」って。なんと温かな会話でしょう。

 一方で、普段は施設のスタッフの声掛けにあまり応じないというおじいちゃん。赤ちゃんの訪問にも、部屋の端で静かにされていました。でも、赤ちゃんが近づいていくと、何も語らず、ただ赤ちゃんの手に触れ、足に触れ、ついには涙を流して喜んでくれました。それを見て、涙する施設のスタッフがいます。なんと温かな光景でしょう。

 そこは、まるでお母さんが赤ちゃんを思うのと同じ「無償の愛」にあふれています。

 赤ちゃんは「このおじいちゃん、おばあちゃんのために何かをやってあげよう」などと決して思っていません。介護の知識もなければ、その方法も全く知りません。でも、お年寄りは、赤ちゃんとふれあうことで、明らかに元気になります。お年寄りと赤ちゃんて、もしかしたら何か共鳴するものを持っているのかなと思います。ゆっくりと流れる生きる時間軸も似ているかもしれません。

 私は、このドラマのテーマは「笑顔」と感じています。決して一方的な慰問ではない赤ちゃんとお年寄りの交流の場は、いつも笑顔でいっぱいです。赤ちゃんも、お年寄りも、親も、スタッフも、周りのたくさんの人が元気になり笑顔になります。

 「笑う門には福来る」「笑いは百薬の長」ということわざがあるように、笑いが健康に良いというのは昔から言われています。近年では、笑いと健康について、たくさんの医学者が研究を重ね、素晴らしい効果があることが分かってきました。人は笑うと、免疫力が高まり、脳の働きが活性化し、自律神経のバランスが整うなど、その効果は数え上げたらきりがありません。

 つらい時こそちょっと口角をあげて笑ってみると、心も体も元気になっている自分に気が付きます。

 これからも「赤ちゃんがいく!」という事業で、人と人とをつなげ「笑顔の循環」を広げていきたいと思います。




子育てネットワークゆるいく代表 井上昭子 前橋市岩神町

 【略歴】マタニティーヨガ指導、産後教育講師、幼児教育アドバイザー。「子育てネットワークゆるいく」を立ち上げ、子育て支援活動に尽力する。武蔵大人文学部卒。

引用元:
赤ちゃんがいく! 「笑顔の循環」広げたい(上毛新聞ニュース)