1人の乳がん患者において、免疫系の微調整によって、乳がん細胞を完全に排除できたという報告が今週掲載される。この手法は、従来のあらゆる治療法が効かない末期がんの治療法になる可能性があり、末期の乳がんにT細胞免疫治療を適用して成功したのは今回が初めてである。

がんの免疫療法の手法として臨床で最も効果が上がっているのは、免疫チェックポイントの阻害とT細胞の養子免疫療法である。前者は、抗体を注射することによって患者の体内でT細胞を活性化する。後者は、患者の血液や腫瘍からT細胞を採取し、その腫瘍を認識するT細胞だけを培養してから患者の体内に戻す。これらの方法の有効性はがんの種類によって大きなばらつきがあり、これまでに免疫チェックポイントの阻害を利用した乳がん治療の臨床試験が何回か行われているが、効果がないことが判明している。

Steven Rosenbergたちは、数種類の既存の治療を実施したものの進行した1人の転移性乳がん患者から、がん特異的T細胞を単離して再活性化した。すると、この再活性化T細胞によって患者の転移病変が全て排除され、患者はそれ以来現在まで、2年にわたってがんは再発していない。著者たちは標的となったがん細胞の特性を分子レベルで詳しく調べ、これによって今回の手法が他の乳がん患者で有用かどうかを高い精度で予測できるようになった。ただし、この結果については、もっと人数を増やした比較臨床試験での確認が必要であろう。


引用元:
患者自身のT細胞で乳がんを排除(Nature Asia)