今回、大阪日日新聞に投稿させていただく機会をたまわり、11年間の産婦人科勤務医と27年間の産婦人科および内科を診療する開業医として、38年間の経験から思いつくことを述べたいと思います。

 産婦人科と他科との違いは出産の立ち会いです。長く経験してきますと、私の父が取り上げた方が出産し、またその子どもが出産し、さらにその子どもが出産と、その一家と長いつきあいができてきます。分娩(ぶんべん)は多様で経過が人により異なり、突然正常が異常に変わる事があり、緊張の連続ですがやりがいのある仕事です。

 近年、問題になっていることで今回取り上げたいと思う事は二つあります。

 まず、新生児の出生体重の低下です。私が医師になった当時、妊婦はとにかく食べて赤ちゃんに栄養をいっぱいあげようとし、多い人では妊娠前より体重が20キロ程増加する方がたくさんいました。しかし、体重増加が著明な人は難産になる傾向があり、その後、なるべく体重増加を抑えるように栄養指導をされることが多くなってきました。

 そこで今問題になっているのは「DOHaD仮説」という考え方です。これは1900年代の英国での疫学調査で、バーカー氏が出生体重の低下が出生児の心筋梗塞などの虚血性心疾患への罹患(りかん)率と強く相関するという事を指摘しました。

 この後、生来の健康や病気と子宮内の発達期に原因があるということが広く分かってきました。胎児期の低栄養状態が乳児期の急な体重増加や脂肪の蓄積をもたらし、肥満の原因となり糖尿病や高血圧に罹患しやすくなると言われています。

 また、最近女性はとにかく細身を求める方が多く、妊娠前と出産時の体重がほとんど変わらない方も多く見られるようになりました。妊娠中のダイエットが、将来子どもが病気になりやすくなるという結果を招いてしまうということなのです。今はやりの糖質ダイエットも胎児の将来のメタボリックシンドロームとの関係が言われています。これからの未来を背負う子どもたちには健康でいてもらわなければならないわけですから、妊娠中の栄養が大事であることを皆さまに知ってもらわなければならないと思います。

 次に気になっていることに子宮頸(けい)がん予防ワクチンのことがあります。導入された時には多くの中学生が当院にも接種に来られました。しかし、テレビで副反応として不随意運動で体をくねらせる少女が紹介され、その後、接種者はほぼ来院されなくなりました。

 このワクチンはがんを治療することはできませんが、子宮頸がんの原因となるウイルスの感染は予防でき、そのことによって発がんを阻止できます。テレビで放映されたこのまれな副反応といわれる症状と予防接種との因果関係ははっきりしないと言われていますが、将来、子宮を摘出しないですむ方を増やし、子宮頸がんを撲滅できるように予防接種が再開になればと思っています。

 (大阪市城東区、ふくだ・よしひこ)


引用元:
一産婦人科開業医の視点から 福田 吉彦 福田医院院長 (大阪日日新聞)