ニーズ探り就労支援
「子供の夜泣きに備えて、ウチの夫は耳栓をして寝ます」「あら、ウチもそうよ」
福島県郡山市の大型商業施設の一角で、子育て中のママが集う「暮らしづくりビレッジ」。4月中旬、この施設を訪れると、赤ちゃんと一緒に体をほぐす体操を終えたママたちの笑い声が響いていた。初対面の人同士でも子育ての話題ですぐに打ち解けられるリラックスした空間だ。
「ビレッジ」は、東京から同市に移住した一般社団法人「スタンドフォーマザーズ」代表理事の田中豪さん(33)が2016年11月にオープンした。
全国初の子育てママ向け民間型ハローワーク「おしごと百貨店」のほか、情報交換の場としてイベントを開催。自家製ベーグルが自慢のカフェも営業する。運営する社団法人のスタッフ13人のうち、9人が子育てママ。田中さんは「子育てで共通の課題を持つママたちが支え合う拠点です」と教えてくれた。
田中さんは大学卒業まで京都市で過ごし、東京の会社で若い母親向け雑誌の編集をしていた時、東日本大震災が発生した。雑誌編集で知り合った被災地の子育て中のママから必要としている物資を聞き、全国のママからおしめなど日用品を集め、ボランティアで運んだ。
女性支援に本腰を入れたくて15年9月に退社。協業の可能性を探っていた郡山市の人材派遣会社に誘われて、子育て中の女性の就労支援に携わった。東京から毎月のように福島県内の各地に通ってワークショップを開催し、子育てママのニーズを探った。「働く意欲が強く、待遇よりやりがいや暮らしとのバランスを重視する」。そんな女性たちの意識を改めて感じた。
「郡山は出産後の女性の仕事復帰率が全国平均より少し低い。ここなら(子育て中の女性の)潜在的な労働力を掘り起こす、新しい就労支援ができる」。日本財団の助成金を得て、16年春に郡山市に移住して「ビレッジ」開業の準備を進めた。
起業して子育てママの支援を始めることを公務員だった母(63)に伝えると、母は「私は子供となかなか一緒にいられなかった」と涙を流した。ショックだった。「母親たちに負い目を持たせ続ける社会では駄目です」。そんな思いが活動の推進力になっている。
京都での学生時代に休学してライブハウス運営を手がけたほどの音楽好き。東京での生活を経て、郡山で独身生活を送る。「食べ物はおいしいし、お金もあまりかからない。生活もゆとりがあります」。移住後2年間の暮らしを、そう振り返った。【笹子靖】=随時掲載
■メモ
「暮らしづくりビレッジ」
郡山市日和田町西中島のオリエントパーク日和田内にある。「おしごと百貨店」は午前9時〜午後6時、カフェは午前10時〜午後6時で、いずれも不定休。求人情報はホームページ(http://kurashivillage.jp/)でも検索できる。
引用元:
U・Iターン/4 東京から福島・郡山へ「暮らしづくりビレッジ」開設 田中豪さん 子育てママの拠点に(毎日新聞)