妊婦の血液から胎児の染色体異常の可能性を調べる新出生前診断(NIPT)を、金沢医科大病院(石川県内灘町)が一月下旬に始めた。富山県では富山大病院で昨年一月に始めているが、石川県内では初めて。毎週水曜に行い、今月四日までに二十一人が受けた。(押川恵理子)

親の思い 寄り添って


 妊娠十〜十五週の妊婦から血液約二〇ccを採取し、胎児のDNAの断片を分析する。先天性心疾患などを伴うことが多い13トリソミー症候群と18トリソミー症候群、21トリソミー症候群(ダウン症)の可能性を調べる。出産時に三十五歳以上となる高齢妊娠や、過去に染色体異常の胎児を妊娠した妊婦らが対象だ。


 現在の出生前診断では最も精度が高い。自費診療のため費用は約二十万円かかるが、血液検査のため流産のリスクもない。結果は約二週間で判明する。


 ただし、NIPTで「陽性」でも、追加の羊水検査で「陰性」と分かることがある。また、「陰性」は胎児が染色体異常ではない確率が99・9%であって、絶対ではない。


 金沢医科大病院は石川県内の産婦人科医を通じて妊婦の意向を調査し、二年ほど検討してNIPT外来を始めることを決めた。笹川寿之・産科婦人科長(61)は「NIPTを受けるため、東北や関西に出向いたという話を聞いた」と導入した意義を話す。


 産婦人科専門医や臨床遺伝専門医、助産師ら五人の専任チームがNIPTを担当する。「陽性」と確定した場合は、小児科医三人のチームが妊婦を支える体制をとる。


 昨年末現在、日本医学会が認めているNIPTをする医療機関は、三十六都道府県で八十九カ所ある。その他でもNIPTをしている医療機関はあるようだが、カウンセリングなどの体制が整っていないため、日本医学会は「診断を受けないで」と呼び掛けている。

医師「産む産まない 判断せず」親「陽性なら どうしたか…」

「命の選別」批判も


 二〇一三年四月、全国で十五病院が新出生前診断(NIPT)を始めた。医療機関でつくる「NIPTコンソーシアム」の集計によると、一七年九月までに五万一千百三十九人が検査を受け、九百二十人が「陽性」と判定された。


 追加の羊水検査などで「陽性」と確定した七百人のうち九割超の六百四十五人が中絶を選んだ。そのため、診断が「命の選別」につながっているという批判があるのも事実だ。


 批判をどう受け止めるのか尋ねると、金沢医科大病院の笹川産科婦人科長は「女性の権利、子どもの権利をどう考えるか。倫理的に難しい問題で、答えられない」とコメントした。カウンセリングを担当する高林晴夫医師(67)は「産む、産まないに関しては医療機関側の判断を持ち込まない。妊婦さんらの思いをよく聞くことに尽きる」と話した。


 二月中旬、妻(32)が「陰性」と判定された夫(35)は「陽性だったら、どう判断したか分からない。親や生まれてくる子どものきょうだいにも関わる問題なので…」と本音を吐露した。


 ダウン症の長男(20)がいる、ボランティア組織「ダウン症聞くまっしシステム」(金沢市)の代表を務める石塚靖志さん(50)は「いろんな子と出会い、障害があってもいろんなことができるんだと気付いた。絵や音楽、一流のものに触れさせることで子どもは伸びる。家庭によっては難しい場合もあるが、可能性を摘まないでほしい」と話した。








引用元:
新出生前診断 県内病院でも 金沢医大 ニーズに応え開始(中日新聞)