出産間近の妊婦の元に最優先で駆けつけ、病院に送り届ける「妊婦タクシー」が千葉県内で広がっている。

 かかりつけの病院を事前登録することで道案内の手間を省いたり、破水に備えて防水シートを常備したりしており、女性たちから「いつ陣痛が来るかわからないので助かる」と好評だ。

 「陣痛が始まって電話したら、すぐに来てくれた。病院までの行き方を伝える必要もなくて、すごく楽だった。おかげで元気な女の子を産むことができました」。先月29日に第2子を出産した千葉市中央区の女性(26)は感謝する。

 女性が利用したのは、千葉構内タクシー(千葉市中央区)の「うぶごえタクシー」。県外で同様のサービスが行われているのを知った同社が2015年4月、「県内でも需要があるはず」と導入した。

 利用者が事前に自宅の住所やかかりつけの病院を登録しておく仕組みで、電話を受けたら最優先で妊婦の元にタクシーを向かわせる。登録は無料で、365日、24時間体制で利用を受け付ける。運賃は後払いも可能。車内で破水した場合でもクリーニング代は請求しない。

 約250人の乗務員の大半は助産師会の講習を受け、妊婦が安心できる声のかけ方などを学んでいる。17年度の登録者数は2597人で、前年度から300人ほど増えた。毎月100件前後の利用があるという。

 昨年11月に第2子を出産した千葉市美浜区の女性(30)も登録していた一人。「家族が近くにいない時や深夜でも呼べる安心感が大きかった」と振り返る。病院に到着した直後に出産したケースもあったといい、同社の加藤雄三専務は「次の出産や、出産以外の時にも使っていただけるようになれば」と期待する。

 県タクシー協会によると、県内で同様のタクシーを運行しているのは10社以上。「陣痛タクシー」と名づけた「エミタスグループ」(千葉市美浜区)は、登録者からの電話が判別できるシステムを取り入れ、女性オペレーターが出るよう心がけている。

 「陣痛119番」を運行する「ムトータクシー」(市川市)は全29台に防水シートを常備。車内で破水した場合でも対応できるよう、運転手の研修を行っている。同社の武藤厚社長は「困っている人に『足』を提供するのがタクシーの使命。妊産婦の不安を和らげる取り組みを充実させていきたい」と話している。


引用元:
最優先で到着「妊婦タクシー」…破水にも対応(読売新聞)