子供を育てられない母親が匿名のまま病院で出産できる、「内密出産制度」の導入を求める動きが広がっている。「こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)」を運営する慈恵病院(熊本市)のほか、熊本市や指定都市市長会も制度の必要性を訴え、関連法の整備も求めている。ゆりかごを設置する各国の関係者が集まる本格的な国際シンポジウムが14日、国内で初めて熊本市で開かれ、この制度についても議論される予定だ。【井川加菜美】
慈恵病院によると、病院に預けられた乳幼児は、2007年の運用開始から昨年までの約10年間で計130人。うち約半数が自宅や車など病院以外で産む「孤立出産」だった。子供の出自を知る権利の問題も浮かび上がっている。
こうした問題を解決するのが内密出産制度で、ドイツが14年に導入した。母親は妊娠相談所に実名を明かせば、匿名のまま病院で出産でき、特別養子縁組などで養育された子供は16歳になると出自を知ることができる。
ただ、導入には法的な壁がある。日本の戸籍法は、出生の届け出を親らに義務付けている。ゆりかごに預けられた子供で母親が分からない場合、熊本市長が名付け親になって戸籍を作る。だが、実際に母親が分かる内密出産では、こうした運用は難しく、子供が無戸籍になる可能性がある。今年1月末、同病院が熊本市と初めて意見交換会を開いたが、市は現行法下での運用については否定的だ。
厚生労働省によると、15年度中に計30人の0歳児が虐待死した。大阪府寝屋川市で昨年11月、セメント詰めにされた乳児4人の遺体が見つかるなど事件は絶えない。
一方、ドイツでは日本のゆりかごの参考にされた「ベビークラッペ」(00年設置)が100カ所以上作られた。ほぼ同時期に身元を明かさずに病院で出産できる匿名出産も始まったが、日本と同様に出自を知る権利などが問題化し、内密出産制度が法制化された経緯がある。千葉経済大短期大学部の柏木恭典准教授(教育学)によると、ドイツでは16年9月までに計249件の内密出産が実施された。しかし、制度導入後もベビークラッペに乳児が預けられている。ベビークラッペを運営するフリーデリケ・ガルベさんは内密出産を評価する一方、「制度があっても、誰にも妊娠を明かせず孤立出産する母親はいる」と指摘。ベビークラッペの存在意義も強調する。
昨年に公表されたゆりかごの検証報告書は、内密出産制度の検討を国に求めた。熊本市や指定都市市長会も昨年、関連法整備を検討するよう要請。柏木准教授は「身元を明かせずに悩む母親のため、制度導入やゆりかごの活用も含め、あらゆる手立てを考えないといけない」と話した。
引用元:
内密出産制度 悩める母のゆりかご 法制化を 病院、指定都市長ら要請(毎日新聞)