大田市内の産婦人科病院は今年初めから「出産奨励イベント」を行っている。自然分べん費用はこれまでの50万ウォン(約4万8000円)から20万ウォン(約1万9000円)台に、帝王切開費用は80万ウォン(約7万7000円)から50万ウォン台に値下げされた。来院する妊婦の数が毎年20%近く減っているために決めたという。この病院の関係者は「近くの産婦人科もほとんどが割引している。人件費にもならない価格だが、損をしてでも病院をPRするため当分の間は続ける考えだ」と語った。


 少子化で経営難に陥る複数の産婦人科病院では妊婦集めに必死になり、値引き合戦をするところが増えている。ソウル市内のある産婦人科病院では今月限定で「自然分べん5万ウォン(約4800円)、帝王切開19万ウォン(約1万8000円)」という破格の価格を打ち出した。すると、近所の各病院もこぞって価格を引き下げた。ある産婦人科医は「一部の大型病院を除けば、産婦人科病院は今後数年で次々と廃業せざるを得ない状況だ。病院が値下げすれば、数少ない妊婦たちがそこに集まるので、ほかの病院も泣く泣く値下げするしかなくなる」と語った。


 妊婦に景品や特典を提供する病院も多い。ある産婦人科病院は先月末から妊婦全員に「10品入りギフトセット」を無料でプレゼントしている。おむつ・哺乳(ほにゅう)瓶・ウェットティッシュなど赤ちゃんに必要な品物だけでなく、高級レストラン食事券も入っている。また、別の病院では海外の有名芸能人たちの間で人気だというブランド物のおむつバッグやおくるみを無料でプレゼントしている。一部の病院ではマッサージや栄養剤など、従来なら別途に料金を取っていたグッズを無料で提供している。

他業者と提携して割引や無料特典を提供する病院もある。ある産婦人科は地元の有名産後ケア施設と提携、「当院で出産したら有名産後ケア施設を30%引きで利用できる」と宣伝している。また、写真スタジオと提携して「臨月写真無料撮影券」を提供したり、メーカーと提携して赤ちゃんの満1歳の誕生日祝い関連費用を割引したりしている。


 妊婦たちはまるで買い物をする時のように特典を比較しながら出産する病院を選ぶ。インターネット上の出産・育児関連コミュニティー・サイトには「どの産婦人科の特典が一番多いか」という質問や、「価格だけを見るとA産婦人科が安いが、プレゼントまで考えるとB産婦人科の方がいい」など、品定めの書き込みが数多く寄せられている。男の子を昨年末出産したイムさん(32)は「出産前、ネットの育児コミュニティー・サイトで最も人気があった病院を選んで出産した。家に近い病院にばかりこだわっていたのは昔の話」と言った。


 分べん診療をする産婦人科病院はますます減っている。それでも競争が激化しているのは、少子化で妊婦の減少速度がそれを上回っているからだ。特に分べん可能な産婦人科が集中しているソウル市内や首都圏の病院で競争が激しい。ソウル市蘆原区の産婦人科病院院長は「分べん室・回復室など分べんに必要な施設を備えるのに数億ウォン(数千万円)かかる。初期費用があるので、分べん価格を下げる限度があるとは言え、妊婦集めを一回であきらめるのは難しい」と話す。


 競い合うように妊婦集めが行われている実態に対して、医療界では懸念の声が上がっている。大韓産婦人科医師会のイ・チュンフン会長は「妊婦の数が急減している中、余力がある一部病院が低価格攻勢により妊婦集めをすれば、ほかの病院は経営難が一層深刻化することになる。医師会で過熱競争防止のため対策を話し合う予定だ」と語った。



ヤン・スンジュ記者 , イ・ヨンビン記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

引用元:
韓国の産婦人科、少子化で妊婦争奪戦が激化(chosunonline)