■大半をネット募金で調達 目標はるかに上回る

 小児・周産期の高度医療を担う「県立こども病院」(安曇野市)は26日から、医師が治療を行いながら患者を搬送できるドクターカーを約11年ぶりに更新する。更新にかかった費用の5022万円は、インターネットで資金を集めるクラウドファンディングで大半を調達した。同院は、全国から集めた善意を活用し、県内の子供の命を守ることに全力を挙げる(太田浩信)

 ◆救急車よりも高額

 「動く集中治療室(ICU)」と呼ばれるドクターカーには、小児集中治療室(PICU)での処置が必要とされる重症患者や、新生児を搬送するために特別な医療機器が必要となる。このため、保育器をはじめ、呼吸や血液の循環、体温の維持といった装備が欠かせない。

 こうした事情から、十分なスペースのあるマイクロバスを改造しなければならず、通常の救急車より購入費用がかさむ。

 現行の車両は平成18年に購入。年間で平均約400件の出動があり、走行距離は43万キロ(10日現在)を超える。老朽化が激しく、サスペンションの交換やエンジンのオーバーホールといった大規模修理を重ねることはもはや限界で、同病院は更新する決断をした。

 そこで同病院は28年4月からクラウドファンディングを活用し、更新費用の寄付を募る活動に着手。当初目標は1500万円だったが、直接病院に寄せられた寄付なども合わせると、総額は5576万円(29年12月末現在)に達した。寄付者も3177人・団体に上った。寄付の残額は、車両の維持・管理のために積み立てられるという。

 原田順和(よりかず)院長は「こんなに多くの寄付が寄せられて驚いている」と話す。更新時期を予定より7カ月早めることができたといい、「多くの人に病院が支えられていると実感した。職員にとって大きな励みになる」と感謝もしている。

 ◆多くの命救って

 新型車両は、ストレッチャーに患者を乗せた時点で、生命維持の治療ができる高機能型ストレッチャーを全国で初めて導入した。2台あって、そのうち1台は、保育器や人工呼吸器、点滴用医療機器などを搭載した新生児科用で、もう1台は、心肺補助装置や除細動器、吸引器などを装備した小児集中治療科用だ。

 災害発生に対応するため、県内の各消防本部と直接、連絡が取れるデジタル無線も初めて備え付けた。

 同病院に到着した新型車両に試乗した下伊那郡の小学3年、村松優蘭(ゆらん)君(9)は、1年ほど前にインフルエンザに起因する劇症型心筋症を発症し、現行車両で搬送された経験がある。そのときのことは覚えていないが、「新しい車は乗り心地が良かった」と笑顔を浮かべた。

 母親のチガ子さん(44)は「みんなの思いが集まって、ドクターカーが更新されるのはうれしい。これからも多くの子供の命を救ってほしい」と話し、自身も寄付を寄せたことを明かした。

 ◆医療拠点の整備重要

 同病院はクラウドファンディングで寄付金を募る前から、県民や県内企業を対象とした寄付の受け入れをしている。

 27年には、サポーターズクラブの創設といった寄付プログラムを始め、寄付者をサポーターに任命し、小児専門医療の必要性をアピールするため、病院報を発送している。

 寄付は、高度医療機器の整備や病院の機能維持に必要な施設修繕などに充てると明示し、店舗や企業に寄付箱を設置してもらったりして募っている。ドクターカーの更新費用をクラウドファンディングで充当するアイデアも、こうした取り組みから生まれた。

 これまでに集まった寄付の総額は、ドクターカーの更新費用を含め、29年12月末現在で1億1466万円となった。その善意は、家族で病院に宿泊できる緩和ケアルームの整備や、次世代型の遺伝子解析装置を操作できる人材の育成、床の張り替えなど有効な使われ方をしたという。

 小児集中治療科の黒坂了正(のりまさ)医師は、少子化が今後も進むため小児医療の過疎地が増えていくとした上で、小児医療の中核拠点づくりが重要だと指摘。「地域の医師も安心して医療に集中できる」として、新型ドクターカーの活躍に期待している。


引用元:
県立こども病院、全国からの善意でドクターカー更新(産経ニュース)