妊婦が感染すると、生まれてくる子どもに障害が出る恐れがある風疹。神戸市の西村麻依子さん(35)は、長女を妊娠して2か月で感染した。現在5歳の長女は発達が遅れ気味だ。こうした先天性風疹症候群をなくそうと国や専門家は、東京五輪が開かれる2020年度までの「風疹ゼロ」達成を目指し、対策に乗り出している。(鈴木希)


妊娠20週ぐらいまで、胎児に影響




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 西村さんは、自身に風疹ウイルスへの抗体がないことを知っていたが、予防接種は受けていなかった。12〜13年の国内流行時に感染し、先天性風疹症候群の怖さを知った。妊娠20週ぐらいまでの感染により、胎児も感染して障害が出やすい。

 長女は予定より1か月半早く生まれ、心臓に穴が2か所開き、右目が濁るなどの症状があった。徐々に改善したが、発達はやや遅れており、今後は聴力が落ちる可能性があるという。

 リクルートマーケティングパートナーズ(東京都)が15年、0〜2歳の子を持つ女性2181人に行った調査では、抗体検査でウイルスに対抗する力を表す抗体価が低いと妊娠時に分かっていた割合は22・6%。その半数近くが、その後も予防接種を受けていなかった。西村さんは「ワクチンさえ打っていれば、子どもに生きにくさを背負わせずに済んだ。知らない怖さ、予防の大切さを多くの人に分かってほしい」と話す。

 かつて風疹は子どもの感染症と言われていたが、日本産婦人科医会常務理事で先天性風疹症候群に詳しい平原史樹さんは「今の感染の中心は大人。影響を受けるのは子どもたち」と指摘する。


30〜50歳代の男性は要注意




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 感染者の年間報告数は流行がなければ数百人程度。昨年は93人だったが、全国的に流行した13年は約1万4000人に上った。このうち約9割が成人だ。それに伴い、12〜14年の先天性風疹症候群も報告があっただけで45人に上った。

 風疹ワクチンは定期接種だが、5%程度は1回で抗体価が上がらず、原則2回接種が勧められる。1990年度以降に生まれた人はその機会があるが、以前は体制が未整備で30〜50歳代の男性は注意が必要だ。

 流行中の2013年6月、米疾病対策センター(CDC)は「風疹の予防ができていない妊婦は、日本に渡航するのを避けるべきだ」とする警報を出した。

 風疹が流行すれば、また海外で警報が出される可能性がある。国は20年度までに海外からの輸入感染を除いて風疹ゼロを達成し、早期に先天性風疹症候群の発生をなくすことを目標としている。

 国は1月、風疹と診断した医師からの届け出の基準を「7日以内」から「直ちに」と変更。従来の指針で集団発生の場合は疫学調査をし、「可能な限り」ウイルスの遺伝子検査を行うとしていたが、今後は1例発生した時点で調査し、遺伝子検査も原則全例で行う。

 国立感染症研究所感染症疫学センター第3室(予防接種室)室長の多屋 馨子けいこ さんは「流行国を渡航中に感染し、帰国後に発病して感染が拡大するケースが多い。海外に無防備な状態で行かないよう予防を呼びかけたい」とする。外務省や厚生労働省もホームページでの予防啓発を始めた。


引用元:
親から感染、生まれてくる子どもに障害…「先天性風疹症候群」をなくすには(読売新聞)