県立こども病院(安曇野市)が4月、件数の上限を設けて正常分娩(ぶんべん)の予約受け付けを始めることが8日、分かった。これまでは小さく生まれる赤ちゃんなど一定程度以上のリスクがある出産を扱ってきたが、少子化に伴い件数は減少傾向。正常分娩も一部受け入れることで助産師や医師が経験を積む機会を確保し、医療技術の維持につなげる狙いだ。

 予約の上限は月5〜10件とし、松本地域の住民を想定。こども病院が本来担うリスクが高い出産や、他の医療機関への影響が出ないようにする。希望者は妊婦健診を担う健診協力医療機関と相談し、紹介状を受けた上でこども病院の産科外来に連絡する仕組み。実際に分娩を扱うのは秋ごろを見込んでいる。

 過去5年のこども病院の分娩件数は2013年度の310件をピークに減少傾向。17年度は昨年12月までに198件となっている。

 同病院には産科医が6人、助産師は約30人が勤務。原田順和(よりかず)院長は「助産師らが一定のスキルを保つため、月30件程度を扱いたい」とする。現在は帝王切開による出産が多く、助産師が正常分娩の経験を積むことも必要とし、「医療の質を保ち、少子化が進む社会情勢の変化に対応していく」と話している。

 松本地域では出産に関わる医療機関の負担軽減のため、8市村や医師会などでつくる「松本地域出産・子育て安心ネットワーク協議会」が医療機関ごとに妊婦健診と出産を分担する態勢を導入している。

 この仕組みを構築した信州大医学部(松本市)の金井誠教授は、こども病院が正常分娩の受け付けを始めることについて、「リスクが高い出産を扱うこども病院本来の機能を保つとともに、妊婦が戸惑わないよう、他の医療機関と調整を図っていく必要がある」と指摘している。

引用元:
県立こども病院 正常分娩を一部受け入れ(信濃毎日新聞)