日本産婦人科医会は2月14日に記者懇談会を開催し、2017年12月に公表した「産婦人科勤務医の待遇改善と女性医師の就労環境に関するアンケート調査報告」について、調査に当たった勤務医委員会の委員らが解説した。責任編者の一人の中井章人常務理事は「若い世代ほど女性の比率が高くなるし、調査結果からも明らかなように、女性の活躍がなければ産婦人科領域は立ちゆかない。『こういう工夫をすればやっていける』というものを、この調査から見いだしていきたい」と述べ、女性医師の就労環境向上の必要性を強調した

調査は全国で分娩を取り扱う施設のうち、有床診療所を除く病院1043施設(2007年調査より238施設減少)を対象に、2017年6月9日から7月31日にかけて郵送で実施。72%の750施設から回答があった。

 産婦人科勤務医数の推移では、2008年と比べて男性は2862人から2828人と減少傾向の一方で、女性は妊娠・育児中が413人から935人に倍増、非妊娠・非育児中も846人から1178人へと増加。勤務医委員会委員長の木戸道子氏は「増分のほとんどが女性で、かつ妊娠・育児中。彼女たちがどう働くかが、日本の周産期医療を握っていると言っても過言ではない」と指摘した。

 院内保育所の設置は2008年の46.8%から70.0%に増加しているが、病児保育は26.3%、24時間保育は29.9%。病児保育や時間外保育について木戸氏は、利用者が限られることや時期や人数が一定ではないことから、医療機関単独で運営するのは極めて難しいと指摘。「子どもが熱を出したら現状では休まざるを得ない。複数の医療機関で共同利用し、(公的な)補助金も検討するべきだ」と述べ、例として東京都港区が行っている病児・病後児保育事業を挙げた

育児中の女性医師への勤務緩和では、夜間当直を緩和なしで行っているのが22.6%、緩和ありが、32.0%、夜間当直なしが40.0%、時短勤務ありが21.2%、分娩担当免除が4.6%だった。木戸氏は妊娠や育児中の女性医師が多いと、それ以外の医師に当直などの負担が増えるとして、当直医は当直のみを行い、その前後を時短勤務の医師が担当することで、当直の負担減少や、時短勤務者の活用を図ることを提言した。

 調査では、勤務時間についての項目で完全回答があった566施設のうち、女性医師が半数以上いる施設を「女性医師メジャー」(234施設)、男性医師が半数を超えている施設を「男性医師メジャー」(332施設)と定義して比較したデータも提示。妊娠または育児中の女性医師は女性医師メジャーでは463人(1.98人/施設)、男性医師メジャーでは352人(1.06人/施設)と、ほぼ倍の割合だった。

 妊娠・育児中の女性医師への勤務緩和では、当直数や、通常勤務と当直を合わせた在院時間では女性医師メジャーと男性医師メジャーで差はなかったものの、当直翌日の勤務緩和があると答えたのは女性医師メジャーで41%、男性医師メジャーで30%。短時間正規雇用制度は女性医師メジャーで49%、男性医師メジャーで38%と有意な差が見られた。勤務医委員会委員の関口敦子氏は、これらの点や保育所の充実、医療クラークの配置などから、女性医師メジャー施設では女性に限らず男性医師にとっても働きやすくなっていると見ており、「男性医師にも優しく、過労死を防げる勤務環境になりつつある。医師全体の勤務環境改善策の推進につながる」と指摘した。


引用元:
「女性活躍なくして産婦人科立ちゆかぬ」(m3.com)