平昌五輪が開幕したが、女性アスリートの日常のケアやサポートに不可欠なのが、産婦人科医のスポーツドクターだ。医学部志望生向けのAERAムック『AERA Premium 医者・医学部がわかる2018』では、国内でも態勢づくりが広がりつつある「女性アスリート外来」を取材。スポーツドクターに話を聞いた。

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 女子選手を支える産婦人科医の重要性が高まっている。

 というのも、生理がこないのを無視したまま、トレーニングや競技生活を続けることによって、深刻な故障や体調不良を引き起こすケースが相次いでいるからだ。特に注目されているのが、「利用可能エネルギー不足」「無月経」「骨粗鬆症」。いわゆる「女性アスリートの三主徴」と称される健康上の問題だ。

 スポーツをするうえで、女性は長らく、「男性の小型版」であるという捉え方をされてきた。しかし男性と女性の体の仕組みは異なる。女性には女性の生理機能にかなったケアやメンテナンスが必要だ。その必要性がようやく認識され始め、スポーツドクターにおける産婦人科医の割合が年々増加してきている。

 そこで、近年開院した女性アスリート外来での兼務も行っている、順天堂大学順天堂医院の北出真理医師に、産婦人科の専門医から見る女性アスリート外来の重要性について話を聞いた。

「日々、女性アスリートの不調を聞くにつれ、予防の観点からも、絶対に産婦人科医が関わらなければいけないと思っていました。というのも、女性アスリートの障害には月経周期が関与するケースが多いからです」

 そう話す北出医師の元には、2014年の開院以来、10代後半を中心に200人前後の女性アスリートたちが来院してきた。月経困難症やPMS(月経前症候群)といったさまざまな主訴のなかでも症例数が多いのが、無月経(3カ月以上生理がこない状態)だという。

「女性アスリートに最も多いのが、視床下部性無月経です。原因の多くは低栄養。体重増加を恐れるあまり、消費エネルギーに比べて摂取エネルギーが不足したり、筋肉をつけようとしてたんぱく質は取るけれども糖質や脂肪、炭水化物は減らすなどの偏った栄養の取り方をしたりすることで引き起こされます。無月経が続けば骨量が減って骨粗鬆症になり、疲労骨折のリスクが高まります。また、女性ホルモンが少ない状態が続けば、将来不妊症にもなりかねません」
治療としては、まず低栄養の状態を改善することから始めるが、年齢や重症度によっては、同時にホルモン補充療法を行うこともある。患者のなかには生理が1、2年止まったまま放置している人も少なくないという。

「多くのアスリートにとって、無月経は楽でありこそすれ、デメリットだという認識がないからなんですね。コーチにも、『生理が止まってこそ一人前』などといった考えを持つ人がまだまだ大勢いるのです。15歳になっても初経がない場合を思春期遅発症といいますが、この時点で骨量が減少し始めていることを疑ったほうがいい。とにかく早く受診してほしいです」

■各診療科が連携して多角的にサポートする

 減量がプレッシャーとなって引き起こす障害には、メンタルなものもあるそうだ。

「アスリートに意外に多いのが摂食障害です。少しでも記録を更新するために女性アスリートたちは体重を減らさなくてはいけないと、自分を追い込んでしまう場合も少なくありません。そのストレスが拒食やむちゃ食いなど、食行動の異常として表れるんですね。適切なカウンセリングを受けることが大事です」

 順天堂医院の女性アスリート外来では、現在は月に1度、整形外科医、内科医、心療内科医、そして公認スポーツ栄養士が関わって症例を検討し、患者の治療方針を決めている。

「婦人科、整形外科、スポーツ栄養士を中心に、いろいろなスタッフが多角的にアスリートを支援しています。このパッケージを全国のさまざまな施設に紹介して、女性アスリート外来の普及に努めていきたいですね」

さらに、順天堂大学が運営する女性スポーツ研究センターでは、月経周期のどの時期にどのようなトレーニングをすれば効率的に筋力の向上が期待できるのか、あるいは指導者が身につけるべきコーチング法についてなど、科学的な側面から女性アスリートを支える研究が行われている。女性アスリート外来はその活動の一環であり、科学的側面と医学的側面がフィードバックし合って、より効果的なサポート態勢を提供できている。

 北出医師は現在、この女性アスリート外来と、本来の産婦人科業務を兼務しているが、産婦人科では生殖内分泌と腹腔鏡手術が専門で、執刀医として週に4日は手術も行っている。

「女性ホルモンの関与するところは尽きませんし、その意味でも産婦人科はやるべきことがバラエティーに富んでいて、私自身25年務めていても飽きることはありません。お産や不妊、低侵襲手術やがん治療もあり、研鑽を積めばスポーツドクターとして仕事の幅を広げることも可能です。産婦人科は、幼少期から当年期まで、女性の一生を診られるドラマチックな診療科だといえます。男女を問わず、ぜひこの楽しい専門領域を目指してほしいですね」

(文/志賀佳織)

※『AERA Premium 医者・医学部がわかる2018』から抜粋

引用元:
「生理がなくて一人前」!? 女性アスリートへの誤解、産婦人科スポーツ医が警鐘(AERA dot.)