国基準より手厚く保育士を配置する東京都世田谷区のマリア保育園。保育士は「子どもの精神的なケアをするためにも人手は必要」と話す
認可保育園に入れない待機児童対策を推進する子ども・子育て支援法改正案が6日、閣議決定された。都道府県ごとの「対策協議会」の設置が盛り込まれ、市区町村をまたいだ認可園の利用などが協議される見通しだ。保育士配置などの基準緩和も議題になりそうで、自治体に警戒感も出ている。
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政府は法案を今の通常国会で成立させ、4月1日の施行を目指している。対策協議会は、都道府県が市区町村や保育事業所と「設置できる」と定めているだけで、政府は法成立後に具体的な議題候補を省令や通知で都道府県に示す方針だ。
住んでいる自治体の認可園に入れない子どもを、定員枠が余っている近くの市区町村の認可園で受け入れる「広域利用」や、保育士の確保策をメインテーマに想定する。一方、市区町村が独自に手厚くしている保育士配置や面積基準も議題になる見通しだ。政府は国基準まで緩和して、その分受け入れられる子どもを増やしてもらいたい考えだ。
これがテーマに浮上したきっかけは、昨年11月の政府の規制改革推進会議の答申だ。認可園には保育士が担当する子どもの数や部屋の広さの国の最低基準がある。例えば、0歳児なら子ども3人に1人、1〜2歳児は6人に1人。だが、実際には多くの自治体がさらに手厚い基準にしている。
「保育園を考える親の会」が待機児童が多い100自治体を調べた結果、9割近くが国の基準を上回る配置を施設に求めていた。答申では「国を上回る基準を設けている自治体に待機児童が多い」と、国並みの緩和を「協議会」で話し合うように要求した。
しかし、自治体や保育現場には緩和に否定的な声が根強い。昨春の待機児童数が全国最多だった東京都世田谷区は、1歳児について、保育士1人あたり5人と国基準より厳しくする。後藤英一・保育課長は「一番大事なのは子どもの安全。区の基準を下げることは考えていない」と話す。
区内の認可園「マリア保育園」は区の基準よりさらに保育士を2〜3人多く配置。収入の8割を人件費に充てるが、働きやすさから保育士の応募は絶えないという。主任の山崎由紀子さん(60)は「保育士数を減らすことは保育の質の低下に直結する」と言い切った。
仙台市は、0歳児1人あたりの部屋面積を国基準より広い5平方メートルとする。私立保育園団体から「最低限の安全性を堅持してほしい」と要望を受けてのものだ。山田聡・環境整備課長は「命を守るための最後の最後のとりで。譲れないところだ」とする。
茨城県内の私立認可園に勤める50代の女性保育士は、「国の最低基準では保育士も子どもも限界」と訴える。園では国基準通り、保育士1人で1歳児クラス6人の子をみている。5年ほど前までは、手厚い「保育士1人で4人」の配置だったが、保育士不足でなし崩しになった。
散歩の前に、1人の子どもがゆっくり靴を履いているのを待っていると、もう1人が目を離したすきに外に出ようとしたりし、つい声を張り上げてしまうことが増えた。園長に増員を求めても「国の基準がそうなんだから」と繰り返された。休憩時間はなく、残業のために休日出勤し、年間約5人が離職してしまう。「この現場の悪循環に目を向けてほしい。建物は次々にできても、中身の質が下がる一方。物が言えない子どもたちにしわ寄せが行き、申し訳ない」
日本総研の池本美香主任研究員は「緩和すれば保育士の負担が増し、離職に拍車がかかって根本的な解決にならない。自治体が慎重なのはもっともだ」と話す。(田渕紫織、中井なつみ)
子ども・子育て支援法改正案のポイントと成立後の見通し
企業が負担する「事業主拠出金」の増額
・社会保険料に上乗せする拠出金率の上限を0.25%から0.45%に引き上げ
・2017年度の0.23%、約4千億円から20年度まで段階的に約3千億円増やす。18年度は0.29%とし約1千億円増
・児童手当などに限定されている使い道を認可保育園の運営費に使えるように拡大
待機児童対策協議会の設置
・都道府県が任意で市区町村、保育事業者、有識者などと設置できる
・住んでいる自治体の認可園に入れない子どもを定員に空きがある市区町村の認可園で受け入れる広域利用や、保育士の確保策などを議論
・市区町村独自の手厚い保育士配置基準などの緩和も議題に
・協議会に参加した自治体にある認可外園には、認可に移行する際の国の補助金を増額
引用元:
待機児童対策と言っても…基準緩和を警戒する自治体(朝日新聞)