妊娠中は、なぜか無性にイライラしたり不安を感じたりと、精神的に不安定になることもしばしば。そんな妊娠中の女性にとってうれしい研究結果が報告された。富山大学医学部公衆衛生学講座の浜崎景准教授らのグループが、妊娠期に魚を多く食べている妊婦は、あまり食べない妊婦と比べて「抑うつ状態」に陥る人が少ないことを明らかにしたのだ。研究の詳細は、昨年11月28日発行の精神医学専門誌 「Journal of Psychiatric Research」 に掲載されている。

7万5,000人の妊婦で検証

 「マタニティブルー」や「産後うつ」といった言葉をよく見聞きするようになったが、女性の場合、妊娠中や出産後は、抑うつ状態になる人が少なくない。抑うつ状態とは、気分が沈んで気持ちがスッキリしない、気持ちがソワソワして落ち着かないといった心の疲れのサインを指す。

 これまで多くの研究により、魚に含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)を摂取すると、うつになりにくいことが報告されている。同大学はこれまでに、環境省が進める子どもの健康と環境に関する全国調査「エコチル調査」の追加調査から、血中のEPA濃度が高い人ほど抑うつ状態になりにくい可能性があることを報告している( 2016;6:e737 )。

 そこで今回、研究グループは、エコチル調査に参加している妊婦約7万5,000人と、そのパートナー4万1,506人について、魚を食べる量と抑うつ状態との関連を調べた。

 対象者を、魚食の量で「少ない」「やや少ない」「中程度」「やや多い」「多い」の5グループに分けて、「少ない」グループと比較した場合の、他のグループの「抑うつ状態」のなりやすさについて検討した。

 その結果、妊娠前期の妊婦では、魚を食べる量が「少ない」グループと比べて、「やや少ない」と「中程度」のグループで、抑うつ状態になりにくかった。妊娠の中〜後期では、魚を食べる量が「少ない」グループと比べて、その他の4グループ全てで抑うつ状態になりにくかった。さらに、出産後1カ月では、魚を食べる量が「少ない」グループと比べて、「やや少ない」「中程度」「やや多い」の各グループで抑うつ状態になりにくかった。

 妊娠期における魚食の量と抑うつ状態に関する検証を、約7万5,000人という規模で行ったのは世界で初めてであり、画期的な研究だという。

 一方、パートナーについて解析したところ、魚を食べる量が「少ない」グループと比べて、「やや多い」グループで抑うつ状態になりにくかった。

 魚を食べると抑うつ状態になりにくいことを示した今回の結果について、研究グループは、「魚を食べていないから抑うつ状態になりやすいのか、抑うつ状態だから魚を食べていないのかについては明言できない。魚をよく食べる人は一般的に健康意識が高く、魚食習慣は単にそのバロメーターになっているだけで、他の健康習慣が影響している可能性もある」と指摘。さらに「極端な解釈は避け、ひとつの可能性として理解してほしい」としている。(あなたの健康百科編集部)


引用元:
妊婦がぜひ食べておきたい食品とは(読売新聞)