2人に1人ががんになるとされる時代ですが、まだ、あまり知られていないがんがあります。「男性の乳がん」です。“女性特有の病”と思われがちな乳がん。男性が乳がんになると、男性ならではの難しさに直面するようです。(さいたま放送局記者 清有美子)
男性も乳がんになるの?
まず、「男性が乳がんになるの?」と驚いた方もいるのではないでしょうか。確かに女性の場合、毎年およそ9万人が乳がんと診断されると言われ、乳がんは性別で見ると女性の患者が非常に多い病気です。
一方で、平成27年度に乳がんと診断された男性は560人、女性を含めた乳がん患者全体の0.6%余りでした。しかし、この10年でみますと、男性の乳がん患者はおよそ10倍に増えています。食生活の変化などが増加の背景にあると指摘されています。
発見遅れ症状の深刻化も
女性の場合、40歳を過ぎると市町村から補助を受けて乳がんの検診を受けることができます。また、自分で胸を触ってしこりなどの異常がないか、定期的にチェックすることも広く知られるようになりました。
一方で、男性の場合は自分が乳がんになるという認識が薄く、胸にしこりを感じても乳がんを疑う人が少ないのが現状です。このため発見が遅れがちで、乳がんと診断された時には、症状がより深刻になっている患者も少なくないと考えられています。
診断は「ステージ3B」
埼玉県川口市に住む64歳の男性のケースです。この男性は5年前、入浴中左胸にしこりを見つけました。そのときは脂肪の塊だと思い、深刻には捉えていませんでしたが、別の用事でかかりつけの病院に行った際、何気なく「これ、何でしょうか?」と医師に尋ねました。そして異常に気付いた医師から専門の病院を紹介され、詳しい検査を受けると「乳がん」と伝えられました。
診断は「ステージ3B」。すでに、皮膚の上からがんがわかるほどに症状が進行していました。男性は「自覚症状がないまま症状が進行していたことにショックを受けました。男性も乳がんになるのかと本当に驚きました」と話していました。
男性は手術や抗がん剤治療などを終え、今も薬の服用を続けていますが、手足のしびれや乾燥、冷えなどに悩まされています。1日に何度もクリームを塗り、家の中でも手袋が欠かせません。
薬の副作用や治療の進め方などについて相談しようと、患者どうしの集まりにも参加してみましたが、乳がん患者の会に参加しているのは女性ばかり、居づらさを感じて思うように相談ができなかったといいます。男性は「周囲の人にも病気や悩みを打ち明けにくく、ずっと孤独を感じていました」と当時の心境を話していました。
男性の乳がん患者の集い
男性の乳がん患者の集い
1月13日、男性の乳がん患者どうしが情報を共有する集いが東京・文京区で開かれました。主催したのはがん患者を支援する、東京のNPO「キャンサーネットジャパン」です。
この日は神奈川県や埼玉県から50代と60代の3人の男性患者が参加。自己紹介の後、それぞれががんと診断された時の思いや、その後の治療、副作用などを説明しました。
また、なかなか話すことのできなかった悩みも打ち明けました。会社や周囲の人に病気のことを伝えられなかったこと、「乳がん」と告げると、好奇の目で見られているようでイヤな思いをしたこと、男性であることを理由に乳がん患者の集まりへの参加を断られたこと。男性患者の集いは2時間余りにわたって続きました。
埼玉県から参加した男性は「初めて男性の乳がん患者に出会い、ほかの人も同じような副作用に悩んでいることを知りました。自分の経験を話すことで、ほかの人を勇気づけられるのでは、とも思うようになりました」と話していました。
主催したNPOの大友明子さんは、「乳がんの男性は悩みを共有できる場が少ないので今後もこうした集いを定期的に開いていきたい」と話していました。
男性も早期の病院受診を
乳がんは女性の場合、30代後半から増え始める一方、男性の場合は、少し遅れて50代から患者が増え始めると言われています。
乳がんに詳しい国立がん研究センター中央病院の下村昭彦医師は「男性は胸にしこりなどがあっても病院を受診する人がほとんどいないのが現状です。男性の場合は胸にしこりができれば触ってすぐに気付くケースが多いので、異常を感じたらできるだけ早く、専門の病院を受診してほしい」と話していました。
引用元:
知っていますか? 男性の乳がん(NHK)