40代女性が「血圧が高い状態が続いている」と言って受診しました。話をうかがうと、約10年前の妊娠時に「妊娠高血圧症候群(HDP)」と診断されたものの、出産後は血圧が正常に戻ったので、すっかり忘れていたと言います。
HDPの人は、産後にいったん血圧が正常化しても、その後に再び高血圧になる人が多いことが知られています。ただ、妊娠中に高血圧があったからといって、出産後に産婦人科でその後の生活の注意点などを細かく教えてくれることはあまりないかもしれません。また、「将来、高血圧となるリスクが高い」と言われても、子育てに追われてそれどころではないという人も多いでしょう。
デンマークで出産または死産を経験した女性約50万人を追跡した研究の結果が昨年7月に発表されました。それによると、初産が20代でHDPを経験した女性では、出産後10年間の高血圧症の発症率は14%、正常血圧だった女性の発症率は4%と、HDPの女性は正常血圧の女性に比べ、高血圧症の発症が約3倍多いという結果でした。初産が30代、40代で比較しても同様の結果でした。
また、出産後1年未満にかぎると、HDPを経験した女性の高血圧症の発症率は正常血圧の女性の12〜25倍にも上りました。
別の米国での研究で、HDPの女性がその後に高血圧症を発症するのにどのような生活習慣が影響しているか調べたところ、体重の増加が大きく影響しているという結果でした。
妊娠中に高血圧になる機序や、それが将来の高血圧につながる原因は詳しくはわかっていません。しかし、これらの結果から、HDPだった女性が「いつの間にかひどい高血圧になっていた」ということは、ある程度防ぐことができそうです。
対策としてはまず、妊娠中に高血圧を指摘された人は、出産後も血圧測定を続ける必要があります。出産してしばらくすると血圧はいったん正常に戻ることが大半ですが、継続して測定するようにしましょう。また、肥満とならないように、健康的な体重を維持することが大事です。
冒頭の女性は、今回の診察で妊娠中のことを聞かれるまで、血圧が高いと言われたことを忘れていたそうです。出産後の体重管理の必要性については、これから妊娠・出産する人や、現在妊娠中で高血圧と言われている人には、ぜひ知っておいてもらえればと思っています。(しもじま内科クリニック院長 下島和弥)
引用元:
(110)妊娠高血圧 出産後も血圧測定、体重管理を(産経ニュース)