親が育てられない赤ちゃんを匿名で預け入れる「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を設置している熊本市の慈恵病院が、妊婦が匿名で出産し、生まれた子が成長した後に出自を知ることができる「内密出産制度」の導入を検討していることが15日分かった。
望まない妊娠に悩む女性が自宅や車中などで孤立した状態で出産し、母子の生命が危険にさらされるのを防ぎたい考え。既にドイツで制度化されており、子供の「出自を知る権利」の保護にもつながる。
日本では環境整備されていないため、慈恵病院は今後、熊本市など関係機関と協議し、理解を求めたいとしている。
病院側の構想では、女性に身元を記した封書を行政機関に預けてもらった上で、匿名での出産を受け入れる。生まれた子は特別養子縁組をした家庭などでの養育を求める。だが現行法上、子供が無戸籍になる恐れがあり課題も多い。
慈恵病院の赤ちゃんポストは2007年に開設。約10年間で130人が預けられ、うち少なくとも62人が母子の生命の危険性を伴う「孤立出産」だった。一方、親の身元が分からない子供が17年3月末時点で26人おり、子の出自を知る権利との両立をいかに図るかが議論されてきた。
運用状況を定期的に検証している熊本市の専門部会は「内密出産制度が一つの解決策」との見解を示し、市は7月と11月、厚生労働省に法整備の検討を求めていた。
慈恵病院の蓮田健副院長は取材に「自宅出産で母子に危険が伴うケースもあった。改善には内密出産が有効だ」と話した。
法整備に向け議論欠かせず
「あんしん母と子の産婦人科連絡協議会」理事長で産婦人科医の鮫島浩二氏の話 望まない妊娠をした女性にとって選択肢が増え、子の命を守ることにつながる。子の立場になれば、実の親が誰かや、自分が生まれた経緯が分からないと、心身の成長に影響が出るケースがある。現時点では慈恵病院の構想段階にすぎず、内密出産の問題点も踏まえて、国が医療や福祉など関係機関と法整備に向けた議論を始めるべきだ。
引用元:
「内密出産」導入検討 赤ちゃんポストの熊本・慈恵病院(日本経済新聞)