胎児と母体をつなぐ胎盤になる能力を持つ「胎盤幹細胞」(TS細胞)の作製にヒトで初めて成功したと、東北大などのチームが14日付の米科学誌「セル・ステムセル」電子版に発表した。胎児に影響を与える薬物を調べるのに役立つほか、不妊治療や再生医療への応用に期待できるという。


 胎盤は、母体から胎児に栄養や酸素を送ったりする器官。妊娠した状態を維持したり、胎児の成長に必要なホルモンを作り出したりする役割がある。


 チームは、健康な女性が出産後に提供した胎盤から、成長していない未分化の細胞を採取。特殊な条件の下で培養し、胎盤になる能力のあるTS細胞を作製した。さらに、このTS細胞を分化させ、胎児と母体との間で栄養や酸素などをやりとりする役割がある細胞や、胎児と母体をつなぐ血管を作る時に働く細胞なども作製できたという。

 ヒトで胎盤を再生できれば、着床障害の不妊や妊娠合併症の治療法を開発したり、投与した薬物が胎児にどれだけ影響を与えるかを調べたりすることが期待できる。

 iPS細胞(人工多能性幹細胞)やES細胞(胚性幹細胞)は体の各器官や組織の細胞を作ることができるものの、胎盤の細胞は作れなかった。受精卵からはTS細胞を作れたが、倫理的問題があった。チームを主導した有馬隆博・東北大大学院教授(分子生物学)は「基礎研究だけでなく、患者の細胞から胎盤を作って治療法を開発したい」と話した。【荒木涼子】










引用元:
東北大など、ヒトで作製 不妊治療へ応用期待(毎日新聞)