娠、出産で変化してしまったプロポーション。いわゆる"産後の体型戻し"は多くのプレママにとって気になることの1つ。「出産前のプロポーションを取り戻したい」という女心から来る美容的意識のみならず、医学的見地から見た場合はどうなのでしょうか。そこで今回は、「女性のための統合ヘルスクリニック イーク表参道」で副院長を務める、産婦人科医師の高尾美穂先生を訪ね、医師から見た、産後の体型の変化と戻し方のポイントをアドバイスいただきました。

また記事の最後では、マイナビニュース編集部がおすすめする、産後の体型戻しに役立つ「リフォームインナー」をご紹介します。

出産は"大怪我"と同じ。ハードな出産で傷ついた体のケアが必要

「出産後のお母さんって、もう満身創痍の状態なんです」と話す高尾先生。

産道から赤ちゃんがやっと出てきた出産後の女性の体は、骨盤まわりの筋肉や皮膚が大怪我をした状態だと言います。

「産後に体型を戻すことは、言ってみれば骨盤や骨盤まわりの筋肉のリハビリのようなもの。怪我の対処は早ければ早いほうが有効ですよね。産後の体へのアプローチも、早い時期からケアしたほうが回復がよいパーツも存在します」とのこと。

まず、出産による骨盤の変化に対する対策について伺いました。ここで意外だったことが、通常の生活において骨盤はほとんど変化する部分ではないけれど、妊娠・出産のときには大きく変わるということでした。

「そもそも骨盤の形は人生の中で変化しないものとされています。骨盤の下方後部にあって脊椎の下に位置する三角形の骨(仙骨)の部分がごくわずかの"うなずき運動"をする程度です。ところが、女性においては妊娠から分娩にかけて骨盤が大きく変化するんです」

「分娩時、赤ちゃんもお母さんも出産に向けて体に変化が起こります。赤ちゃんは産道を通り抜けるため頭蓋骨どうしを重ねて頭の断面積を小さくします。一方でお母さんの体は赤ちゃんの通路となる骨産道を広くするために、骨盤を形成する骨である恥骨どうしや仙骨をつなぐ”靭帯”や、骨盤の下部にあって内臓や子宮を支えている”骨盤底筋”が変化をし準備します。このとき、骨盤を形作る骨自体は変わりません。恥骨どうしをつなぐ恥骨結合、仙骨と腸骨をつなぐ仙腸関節がゆるみ、赤ちゃんにとっての骨盤の出口が大きくなるのです。これが“出産で骨盤が歪む”と言われる理由ですね。最終的に赤ちゃんはスクリューのような旋回運動をしながら骨産道を通り、縦長の楕円形に開いた骨盤の出口から外に出てきます。骨盤の中の狭い産道を通って赤ちゃんがでてくるわけですから、お母さんの骨盤まわりは大きなダメージをうけます」と高尾先生。

とはいえ、産後のお母さんが受けるダメージには当然ながら個人差があります。人によっては時間の経過によって元に近い状態に戻ることもあったりと、人それぞれで状態は変わるそうです。

「たとえば、経腟分娩と帝王切開とでもダメージを受ける部分が全然違います。骨盤周りに関しては経腟分娩のほうがトラブルが起こりやすいですね。恥骨の高さが左右で違う状態で固定してしまったり、体重は戻ったけどズボンのサイズが戻らないなど、産後に体型がうまく戻らなかった人がいるのは事実です。人によって差はあれど、産後にケアの取り組みをするほうがメリットはあると考えています」

骨盤ケアのポイントとは?

産後の骨盤ケアにおけるポイントは、アプローチする場所に注意することと、左右をなるべく均等に戻すことだという。

「ケアの時に締めたいのは、股関節の横あたりにある出っ張り、”大転子”のラインです。均等になった状態で固定されるのが理想なので、たとえばヨガなどで左右均等な動きを取り入れてから固定するのも良いですね。その際にリフォームインナーのような固定用ベルトを上手に利用するのも1つの手です。巻く位置には気を付けてくださいね。必ず恥骨と大転子を結ぶ線上で、座りづらいくらいの位置が正しい巻き方です」

また、骨盤底筋に対しては早期のケアも重要だという。
「特に経腟分娩の場合、骨盤底筋へのアプローチは早ければ早いほうがいいので、産後すぐ、入院中からのトレーニングも可能です。その後は姿勢を戻し、筋力を戻していってください」とアドバイスします。

産後の体型戻し、「6ヶ月」の理由とは?

産後の体型戻しは一般的に6ヶ月以内と言われることが多いですが、これに医学的な根拠があるのかも気になるところ。高尾先生に質問したところ、次のように答えてくださいました。

「妊娠中”リラキシン"というホルモンの影響で靭帯が変化します。このホルモンが出る時間=体型戻しの期間と思われがちですが、分泌の時期は出産前後がピークです。その後は徐々に減っていき、分泌される期間には個人差があります。実はこの6ヶ月間とは”靭帯が元に戻る時間”の定説なんです。厳密には、出産で傷んだ靭帯が戻る期間=6ヶ月の間に産後の体型戻しをしよう、ということなんです」

ちなみに、予定帝王切開の場合、赤ちゃんの頭が骨盤に降りてくるより前の段階で手術が行われるため、骨盤周辺は経腟分娩ほどのダメージは受けないそうです。

「臨月近くになると、赤ちゃんが下がって来るような感覚になりますが、それは子宮の重力による感覚の変化。医師が言う”頭が下がった状態”とは、赤ちゃんの頭が骨盤に陥入した状態のことです。経腟分娩の途中で緊急帝王切開に切り替える場合でない限り、帝王切開の場合、骨盤へのダメージはそれほど大きくない方が多いです」

しかし、帝王切開で出産した場合も産後のケアが必要と話します。

「帝王切開で出産した方は、お腹の傷のために極端にお腹に力を入れることを怖がったり、切開した傷口をかばおうとして姿勢に影響が出る傾向にあります。体が戻っていく中でも恐怖心が先立つことで腹直筋が上手に使えないため、腰に負担がかかるケースも多い。その場合、傷口を守るためのガードとして縦に幅が長い腹巻タイプのリフォームインナーが役に立つと思います。リフォームインナーの効果には個人差がありますが、着けていて悪い影響を及ぼすということはありません。使用するにこしたことはないでしょう」

最後に「良い産後を迎えるコツは、産前の過ごし方にかかっています」と高尾先生。

「出産というのはなかなか思い描いていたとおりに行かないのが現実です。ただ、そうした中でもできることはなんだろう? と考えることが大事です。出産後は体力も低下していますし、慣れない育児で自分自身に余裕がない状況。そのため産後ケアのプログラムが始められるのは、結局2ヶ月後くらいになってしまいがちです。でも、妊娠中に知識を持って準備しておけば、出産直後から自力でケアできたりもします」

また、出産、産後をよい状態で迎えるためには妊娠中をよい状態で過ごすことが大事。その後の子育ても含めて人生はすべてつながっています。日々の積み重ねが影響しているということを忘れずに日ごろから努力することを怠らないでくださいね。産後は出産前より良い状態を目指すのではなく、現状よりも良い状態を目指していきましょう」

引用元:
お産で骨盤がゆがむ仕組みとは? 産婦人科医が教える「体型戻し」の知識 (マイナビニュース)