月経がある女性の10%、日本では260万人以上の患者がいると推計される子宮内膜症。進行すると日常生活に支障をきたすだけでなく、不妊や卵巣がんのリスクが高まるだけに、月経痛などの症状がある人は早めに医療機関を受診、治療を受けることが大切だ。(平沢裕子)

 繰り返す月経で悪化

 東京都内の会社員女性(39)は6月、子宮内膜症が卵巣に発生し、袋ができて中に血がたまる「チョコレート嚢胞(のうほう)」の手術をした。女性検診で見つかり、血腫が破裂したり卵巣がんに変化したりするリスクがあると聞き、手術を決めた。女性は「生理痛はあったが、我慢できないほどではなかったので病院に行かなかった。手術後に生理痛が軽くなり、こんなことならもっと早く婦人科を受診すればよかった」と話す。

 子宮内膜症は、本来なら子宮の内側にある内膜と似た組織(子宮内膜症組織)が、何らかの原因で子宮以外の場所、例えば卵巣やおなかの中に生着し、月経の度に増殖・悪化していく病気。子宮内膜症を啓発するNPO法人「日本子宮内膜症啓発会議」(JECIE)副実行委員長で、東京大産婦人科の甲賀かをり准教授は「子宮内膜症は、月経を繰り返すことで悪化・進行する。晩産・少産化で月経回数が多くなっている現代女性は、多産だった昔の女性に比べ、子宮内膜症にかかるリスクが高くなっている」と指摘する。

 「痛み」放置しない

 近年、妊娠を望みながらなかなか妊娠できない女性が増えているが、その約半数に子宮内膜症があるといわれている。

「20代から30代半ばまで仕事を一生懸命して、いざ子供がほしいと思ったときに、子宮内膜症が進行していてなかなか妊娠できないという女性は少なくない。そうならないためにも、若いときから月経痛などのサインを甘く見ず、早期に受診し治療することが大事になる」(甲賀准教授)

 日本では月経痛があっても「病気ではない」と考え、我慢するか、鎮痛薬や漢方薬による対症療法ですませる女性が少なくない。月経のたびに症状が重くなってきたり、鎮痛剤の効果が感じられなくなったりしている場合、なんらかの病気が原因で痛みを引き起こしている可能性が高い。実際、日常生活に支障をきたすほどの月経痛である「月経困難症」の原因のトップは子宮内膜症で、月経困難症の人は、そうでない人より子宮内膜症になるリスクが2・6倍高まるとの報告もある。

 他に、月経時以外の腹痛▽排便痛▽性交痛▽腹部膨満感−などの症状も子宮内膜症のサインとされる。ただし、まれではあるが症状が出ない場合もある。症状がなくても、例えば妊娠を考え始めたときなどに、一度産婦人科を受診することが勧められる。

 保険適用、ピル

 治療は薬物療法もしくは手術がある。早期であれば、低用量ピルまたは超低用量ピルと呼ばれる薬でかなり改善する。この成分は、健康な女性の卵巣から分泌されるホルモンと同等の物質だ。平成20年に子宮内膜症の治療薬として国が承認し、健康保険が適用される。甲賀准教授は「鎮痛薬や漢方薬は痛みの緩和効果はあるが、子宮内膜症の根本的な治療にはならない。日本ではピルに対して抵抗感のある人も少なくないが、ピルは長年世界的に使用され安全性も確認されている。長期間使っても大丈夫なので、医師に相談してみてほしい」。

 子宮内膜症の診断・治療は主に産婦人科のクリニックで行っており、JECIEのホームページ(www.jecie.jp)の「会員一覧」が参考になる。



引用元:
それ、ただの生理痛? 晩産・少産化で「子宮内膜症」増加 不妊の原因にも(産経ニュース)