記念フォーラム センター設置を提言

 遠野市が開設した助産院「ねっと・ゆりかご」が今年、10周年を迎える。18日には市内で記念のフォーラムが開かれ、全国でも珍しい公設公営の助産院の歩みを振り返った。一方で、今後も産婦人科医や助産師の不足が見込まれることから、市は産前産後のケアに取り組む全県的な施設の設置を提言した。

 遠野市では2002年3月に県立遠野病院の産婦人科医が退職して以来、産科医不在の状態が続く。市は「安産の里」を目指して07年12月、「ねっと・ゆりかご」を開設。助産師2人を雇用し、盛岡や大船渡などの10医療機関と連携してモバイル遠隔健診を行うなど、妊婦の支援を続けてきた。東日本大震災時には沿岸の妊婦を受け入れ、内陸の病院との中継地としての役割も果たした。

 市によると、過去7年間の市内の妊娠者数は人口減に伴い減少傾向だが、相談件数は増加傾向にある。

 市保健医療課の沢村敦子係長は「就労の問題や核家族化など、妊婦を取り巻く現状は厳しさを増しており、相談などのニーズは増えている。これは産前産後だけでなく、育児、子育てにも当てはまる」と話す。15年には子育て包括支援体制を整備し、出産から育児まで、切れ目のない支援を目指している。

 この日、市内で開催されたフォーラムには約250人が集まり、「ねっと・ゆりかご」の開設時から監督医を務める、県立大船渡病院の小笠原敏浩副院長らが講演した。小笠原副院長は、「産婦人科医、助産師の減少は今後も続く。県内は出産施設まで1時間以上かかる地域が多く、看護師や保健師、救急隊、栄養士などを交えたチームで、周産期医療圏を考えていくべきだ」と強調した。

 また、育児の悩みや産後疲労を抱えた妊産婦が宿泊して支援を受けられる「健康科学大学産前産後ケアセンター」(山梨県笛吹市)の榊原まゆみセンター長が取り組みの実例を紹介。「産後うつなど支援を必要とする母親は多いが、悩み事などを打ち明けづらい人も多い」と、産前産後のケア施設への潜在的な需要の高さを語った。

 最後は県と市町村、関係機関がネットワークを結び、妊娠・出産・子育てを地域全体で支える「岩手いーはとーぶ産前産後ケアセンターの設置」を遠野市から提言し、締めくくった。(安田英樹)


引用元:
「産前産後ケア 全県的に」…遠野市助産院開設10年 岩手  (読売新聞)