明らかな胎児形態異常のない単胎妊娠だった36万5,417人を対象に

国立成育医療研究センターは11月6日、高年妊娠における妊娠高血圧症候群発症、帝王切開、早産分娩などのリスクについて明らかにしたと発表した。この研究は、同センター産科の小川浩平医員、社会医学研究部の森崎菜穂室長らのグループによるもの。研究成果は、英国際誌「BMC Pregnancy and Child birth」に掲載されている。


近年、女性を取り巻くライフスタイルの変化や生殖補助医療の発達などにより妊娠年齢が上昇しており、35歳以上の高年妊娠の頻度が増加している。また、40代での妊娠も増加しおり、平成27年度の厚生労働省の報告では、40〜44歳での出生数が約5.2%、45〜49歳での出生数が0.1%を占めており、5年前、10年前との比較では明らかな増加傾向を認めている。母体年齢と妊娠予後については数多くの論文が世界中から報告されてきたが、その多くは35歳以上もしくは40歳以上を最大のカテゴリーとしていて、45歳以上の妊娠について検討する報告は少数だった。また同じ高年妊娠でも、初産かどうかや不妊治療による妊娠かどうかなど母体背景はさまざまだが、このような背景が異なるときの年齢毎の妊娠予後に関して詳細に検討した研究も少数だった。

今回の研究は、日本産科婦人科学会が集積した周産期データベースを使用して、明らかな胎児形態異常のない単胎妊娠だった36万5,417人を対象として実施。対象となった妊婦は、30〜34歳(20万4,181人)、35〜39歳(13万1,515人)、40〜44歳(2万8,797人)、45歳以上(924人)に分類された。このように大きな集団を解析対象とすることで、死産など比較的少ない頻度の合併症を対象とした解析や、対象を「不妊治療で妊娠した人」に限定するなど条件を限定した解析を行うことが可能となったという。なお、この条件を限定した解析は、データ欠損を全く含まない18万3,084人が対象だった。

年齢上昇で妊娠高血圧腎症のリスクが有意に上昇、経産婦で顕著に

解析の結果、母体年齢が高いほど、妊娠高血圧症候群、前置胎盤、帝王切開分娩の頻度が上昇。最も年齢が高い45歳以上の群では30〜34歳の群と比較して、それぞれのリスク比は1.90、2.19、1.71だった。同様に母体年齢が高いほど、早産、未熟児出生の頻度は上昇。しかし、その差はいずれもわずかであり、最も年齢が高い45歳以上の群でも30〜34歳の群と比較して、リスク比はそれぞれ1.22、1.18だったという。また、母体年齢が高くなっても、死産・胎児死亡の頻度は有意には変わらなかった。

さらに、年齢による妊娠高血圧腎症リスクの上昇は、経産婦で顕著だった。前置胎盤については、初産婦でも経産婦でも年齢が上昇するとリスクも上昇。帝王切開分娩のリスクは、初産婦では年齢が高くなると有意に上昇するのに対し、経産婦では有意なリスクの上昇は認められなかったという。

妊娠高血圧腎症のリスクは、生殖補助医療によらない妊娠の場合に、年齢が上昇するとリスクも上昇。また、前置胎盤も同様に、生殖補助医療によらない妊娠の場合に年齢が上昇するとリスクが上昇していた。一方で、帝王切開分娩のリスクは、生殖補助医療の有無にかかわらず年齢が高くなると上昇したという。

なお、この研究は明らかな胎児形態異常症例や多胎症例は除外して検討しており、結果の解釈には注意が必要だとしている。今回の結果はひとつの知見であり、患者の管理方法については主治医がそれぞれの症例と地域の事情を考慮して選択すべきだ、と研究グループは述べている


引用元:
45歳以上の高齢妊娠で母体合併症のリスク上昇、帝王切開分娩も増加−成育センター(QLifePro医療ニュース)