女子のほとんどが十代前半で初めての生理(初潮)を迎える。ただ、栄養状態の向上などから初潮は早くなっており、低年齢で体に負担がかかることにもなる。深刻な生理痛に悩む女子も多いが、恥ずかしさなどから相談せずに、痛みを放置してしまうケースもある。専門家は「放置すると子宮内膜症などの病気につながり、不妊のリスクも高まる」と警鐘を鳴らす。 (今川綾音)


 「十四歳から生理痛があり、年々ひどくなる」「動くのに支障を来すときは痛み止めをのむ」


 大阪府にある看護学校の非常勤講師で、看護師と助産師でもある林祐子さん(43)は、学生からこんな声をよく聞く。「十代のうちから重い生理痛に悩んでいる子が目立つ」と林さん。診察を受けず、市販の鎮痛薬を自分の感覚で調節している学生も多いという。


 不妊予防教育に力を入れている林さんは「不妊に悩む女性は、必ずと言っていいほど若い頃から生理の不調がある。十代のうちから痛みなどのトラブルに対処することが、後の不妊予防にもなる」と話す。


 生理痛を抱える十代女子はどのくらいいるのか。ライオン(東京都墨田区)が母親らに尋ねた調査では、中学三年生の95%に生理痛があった。しかし痛み止めを使ったのは43%にとどまる。同社が母親とその娘百八組に尋ねた別の調査では、十〜十五歳の生理痛は母親が把握しているよりも重い場合があり、痛みで授業に集中できない女子が53%にのぼることも分かった。


 同社快適生活研究所研究員の山岸理恵子さんは「女子の半数が生理痛を我慢している可能性がある。母親が考える以上に深刻な痛みを抱え、勉強やプライベートに影響が出ている子がいる」と指摘する。自分の生理痛が軽かった母親は、娘の痛みも同じ程度だろうと思いがち。しかし、「痛いと訴えていたら、軽視せずに受け止めてあげて」と注意を促す。


 若い頃から生理痛が頻繁にあった人は、そうでない人より、不妊の原因となる子宮内膜症になる確率が二・六倍になるという。産婦人科医で日本家族計画協会理事長の北村邦夫さん(66)は、「生理中やその前後に痛みなどの不快症状があったら、すぐに婦人科などを受診して」と呼び掛ける。


 家庭で親も十分に気を付けたいところだが、十代は思春期と重なることもあり、両親と素直にやりとりするのが難しい年代でもある。林さんはまず、生理中の食事への配慮を挙げる。生理中は、体の温まる鍋料理や飲み物など、体調に合わせた食事を心掛ける。


 生理が毎月来ているか直接聞きにくい場合は、生理用品の減り具合や、トイレに使用済みナプキンが捨てられているかでも確認できる。三カ月以上生理がない場合は、過度なダイエットや運動で止まっていたり、妊娠していたりする可能性もあるので医療機関の受診が必要だ。


 血行を悪くし、痛みの原因にもなる冷えにも要注意だ。十代はおしゃれをしたい年頃だが、体を締め付ける服などは避けたい。腹巻きやレッグウオーマーを着用したり、膝掛けも使ったりして体を温めることも忘れずに。入浴も大切。基本的に入浴中は水圧があるので多量の出血はないというが、気になる場合は家族の中で最後に入るとよい。


引用元:
10代の重い生理痛 受診を 子宮内膜症などリスク(東京新聞)