不妊治療を巡る岡山大大学院の2016年全国調査結果で、第三者からの卵子の提供を「認める」「条件付きで認める」とする肯定的な回答が合わせて72・6%を占め、前回13年調査結果に比べ、17ポイント余り増えていることが分かった。国内では卵子提供に関する適用法令がなく、実施には幾つものハードルがあるとされる一方、卵子提供という治療行為自体への国民の理解は進んでいるとみられる。

 調査結果を取りまとめた岡山大大学院保健学研究科の中塚幹也教授は「データからは卵子提供ニーズの高まりが読み取れる」とした上で「誰が『母』になるのかといった法制度の整備が急がれるほか、親子、提供者らの心的サポートに向けた体制づくりなど課題は多く、議論を進めるべきだ」と指摘している。

 結果によると、卵子提供については「認める」が24・4%、「条件付きで認める」が48・2%に達し、否定的な「認めない」は27・3%にとどまった。「条件付き」の項目がなく二者択一で質問した13年調査では肯定的な回答の「認めてよい」は54・9%だった。

 卵子提供を認める条件としては「生まれつきの病気で卵巣機能が低下」(90・2%)、「抗がん剤による治療で卵巣機能が低下」(84・7%)の項目が前回より増え、高い値を示した。卵子を誰から提供されるべきかは「第三者に限る」21・1%▽「血縁者に限る」27・2%▽「どちらでもよい」51・7%―だった。

 中塚教授によると、卵子提供を巡っては、日本産科婦人科学会が法整備まで実施すべきでないとの方針を示す一方、一部医療機関は独自の指針を定めて先行的に実施しているという。調査では提供条件などの法規制についても問い、62・9%が「規制すべき」と回答。「学会の自主規制のみでよい」は27・2%、「規制すべきでない」は7・8%だった。

 調査は16年2〜8月、中塚教授の研究室が行った。岡山など15都道府県の7895戸に質問紙を郵送し、18歳以上の有効回答1322人を対象に分析した。

 卵子提供 卵子がなかったり、卵巣機能の低下で妊娠しにくくなったりした女性が第三者から卵子の提供を受け、精子と体外受精させて子宮に移植し、出産を目指す生殖補助医療。国内では姉妹や友人の卵子による出産例があるほか、神戸市のNPO法人は3月、卵子のない女性が匿名の第三者から提供された卵子で出産したと公表した。

引用元:
不妊治療の卵子提供 72.6%肯定 岡山大大学院の16年全国調査(山陽新聞)