働き盛りの女性に発症しやすい子宮頸がんでは、子宮を取り除く「腹腔鏡下広汎(こうはん)子宮全摘術」において、ロボット支援下手術(ダヴィンチ治療)が昨年4月、先進医療Bとして認められた。

 全国の施設で100例の臨床研究を行った後、保険収載への検討が行われる。この婦人科領域のロボット支援下手術でも、日本は世界に後れをとった状態が続いていた。

 「子宮のように、視野の悪い骨盤内で行う手術では、ロボットのカメラで拡大された視野を確保し、自由自在に動かせるロボットアームの治療は、とても向いているといえる。米国では、年間約50万件のロボット支援下手術が行われており、その半数は婦人科領域。さらに、子宮悪性腫瘍手術の約8割は、ロボット支援下手術で行われている。日本でもロボット支援下手術の利点を生かせるように、貢献したいと思っています」

 こう話す東京医科大学産婦人科学分野の井坂恵一特任教授は、婦人科領域の手術の第一人者である。

 井坂医師は今年2月、「日本婦人科ロボット手術研究会」を立ち上げて理事長に就任し、適切なロボット支援下手術の国内での迅速な普及を後押ししている。

 「子宮頸がんの先進医療Bを着実に進めることで、その後、子宮体がんなど婦人科領域全体に広めることができればと考えています。子宮体がんは、子宮頸がんと比べて従来の腹腔鏡下手術を行いやすいのですが、脂肪が多い方には、ロボット支援下手術が向いているのです」

子宮体がんは、米国で患者数が多く、食の欧米化に伴い日本でも増えている。肥満傾向の人が発症しやすく、子宮を取り除く手術では、お腹の脂肪を避けつつ、その重さに医師の動かす手が耐えなければならないことも。ロボット支援下手術であれば、ロボットアームは脂肪の重さに左右されることなく、手ブレもなく動かすことが可能だ。米国では、BMI(体重kg÷身長メートル2乗)で「35」以上の極度な肥満の人に対しても、ロボット支援下手術が実施されている。

 「合併症の少ない低侵襲治療として、ロボット支援下手術は優れている。現在、ロボット支援下手術の医療機器は高額といわれるが、普及が進み、他の医療機器も開発されることで、状況は変わると思っています」

 現在、ロボット支援下手術の医療機器は、ひとつのメーカーの独壇場だが、水面下ではさまざまな医療用ロボットの開発が進んでいる。医療機器の開発と技術の向上。それがロボット支援下手術の普及には欠かせない。

 井坂医師は言う。「10年後には、手術の大半はロボット支援下手術で行うことが、当たり前になっているでしょう」



引用元:
子宮全摘術 肥満傾向で脂肪が多い人でも、スムーズな手術が可能(ZAKZAK)