ホルモン補充療法(Hormone Replacement Therapy:HRT)は、更年期障害の有効な治療法だが、誤解も多い。今回は、日本産科婦人科学会、日本女性医学学会による『ホルモン補充療法ガイドライン』の作成委員長を務める、飯田橋レディースクリニック院長の岡野浩哉さんに、HRTの効果と注意点などを聞いた。


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Q.つらい更年期の症状の改善に、ホルモン補充療法(HRT)が効果があると聞いたのですが、どんな治療法ですか? 誰でも受けられるのでしょうか?

減少したエストロゲンを補って更年期のQOLを上げる

 女性にとっての更年期は、閉経を迎えて卵巣の機能が衰え、女性ホルモンの分泌が急激に減っていく時期です。HRTは、女性ホルモンのエストロゲンを少し補充することで、更年期に伴う様々な症状を改善させる治療法です。

 HRTで期待できる効果は、主に二つあります。


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 まず、ホットフラッシュ(のぼせ、ほてり)、発汗の異常、動悸どうき、睡眠障害、イライラ、不安感、抑うつ気分など、更年期に起こる不定愁訴を改善し、QOL(生活の質)を改善することです。女性ホルモンを補充する効果で、自律神経の乱れがおさまり、急な発汗や胸のドキドキなどが起こりにくくなるのです。

 もう一つは、更年期以降に発症しやすい病気の予防です。年齢とともに進んでいく皮膚の乾燥や粘膜の萎縮による不快な症状を改善したり、骨密度の低下を防ぐことで骨粗しょう症や骨折を予防したりします。また、血管の老化である動脈硬化を抑えるので、心筋梗塞などの予防も期待できます。

恵子:最近、汗をひどくかきます。特に、夜中に何度も汗びっしょりになって目が覚めるのがつらいんです。こんな症状もHRTで改善できますか?

 日中、汗が出て仕事などに差し支えるのも困りますが、寝汗もつらいですね。更年期になると不眠を訴える人が増えますが、自律神経のバランスが崩れたことで、恵子さんのように寝ている間の体温調節がうまくできなくなり、眠りが浅くなる人も多いようです。


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 こうしたホットフラッシュに対して、HRTは速効性があることがわかっています。症状の程度にもよりますが、開始して数日ほどで効果を感じる人が多いですよ。

 そのほか、性交痛や膣ちつの乾燥感にも、HRTは速効性があります。
皮膚のかゆみ、全身の関節痛などにも効果が認められています。

 一方、イライラや気分の落ち込み、やる気が出ない、集中力の低下といった精神的な症状には、「HRTですぐスッキリ!」というわけにはいかないかもしれません。とはいえ、2週間から2か月ぐらい続けるうちに、「気持ちが明るくなって、前を向けるようになった」という患者さんはたくさんいます。

 症状に応じて、HRTと漢方薬などを併用しながら治療を進めていきましょう。HRTは精神科の薬、血圧や血糖の薬、痛み止め、抗生物質などを服用している時にも行うことができます。

HRTを受けられないのは、どんな人?

恵子:私はまだ数か月に一度くらい月経があるので、閉経したと言えない状況ですが、HRTを始めることができますか? 

 「閉経」は、最後の月経から1年間たったときに確定するものです。更年期のつらい症状はその前から始まりますので、我慢して閉経を待つ必要はありません。開始の時期に特に制限はありませんが、期待できる効果やリスクなどを考えると、閉経後5年以内にスタートするのがベストともみられています。

 治療を始めるには、まず、HRTを行っていい状態かどうかをチェックします。婦人科の更年期外来などを受診して、問診で症状の内容や程度、月経の状況を確認。内診やエコー検査のほか、必要があれば血液検査でホルモン値を測り、閉経しているか、閉経に近づいていれば、受けられます。

 ただし、乳がんの患者さんや経験者は、ホルモンを補充することで病気の悪化や再発リスクが上がるので、HRTを勧められません。脳卒中や心筋梗塞などの経験者も、この治療の対象にはなりません。そのため、治療前に、乳がんなどの検査や、肝機能の状態や他の病気がないかの確認を行い、問題がなければ治療を始めることができます。


<HRTを始める際のポイント>
•更年期の症状があり、HRTを希望している
•乳がんがない(既往がない)
•脳卒中や心筋梗塞などを起こしたことがない
•重度の肝障害がない

 なお、子宮体がんや子宮頸がんの既往があっても、HRTを行うことはできますので、更年期治療に詳しい医師に相談してください。

恵子:最近、つらい症状が仕事にも影響しているように感じるので、HRTを試してみたいのですが、合わなければやめることもできますか? また、どれくらいの期間、続けることになるのですか?

 HRTを始めて不調が改善すれば、結果的にエストロゲン減少による更年期症状だったとわかります。ですから、2〜3か月ほど試してみて効果が感じられなければ、エストロゲン欠乏による症状ではないと判断して、別の治療法を探せばいいわけです。HRTによるエストロゲンは代謝され、体外に排泄はいせつされるので、使用を止めた後に体に残ることはありません。

 治療の期間については、以前は、乳がんのリスクを考えて5年間をめどに中止を考えるとか、60歳を超えてからのHRTは行わないなどと言われていました。しかし、最新の研究から、何年間とか何歳までといった制限は必要ないとみられています。どれぐらい継続するかは、その人の体調や治療の目的に合わせて決めていくべきでしょう。

 ただ、どんな治療にも効果があると同時にデメリットもあるものです。後半で詳しく説明しますが、乳がんなどのリスクもゼロではありません。そのため、数年続けたら、医師と相談して、体調をみながら薬の量を減らしていくのもいいと思います。例えば、薬を忘れてしまった時でも症状が気にならなくなれば、止め時かもしれません。


引用元:
<更年期治療>ホルモン補充療法の効果とリスク(ヨミドクタープラス)