産科クリニックから紹介された30代後半の女性は、妊娠糖尿病と診断され血糖値の管理が必要になりました。自分が糖尿病とは思ってもいなかったそうです。ただ、少し思い当たるところも。妊娠してから「2人分だから」とつい食べ過ぎてしまい、産科医から「体重増加が早過ぎる」と注意されていたそうです。

 妊娠糖尿病は、妊娠をきっかけに血糖値が上昇する病気です。妊娠すると母体と胎児をつなぐ胎盤ができますが、胎盤から出るあるホルモンが血糖値を下げる働きをするインスリンの効きを悪くすることで発症すると考えられています。高齢出産や糖尿病の家族歴がある人はリスクが高くなります。

 妊娠中に高血糖が続くと、流産や帝王切開の頻度が高くなったり、生まれた子供が成人したときに肥満や糖尿病になりやすかったりすることが指摘されています。9カ国2万5千人の妊婦を対象にした2008年の研究では、通常では糖尿病といえない程度の血糖値の上昇でも、母子に悪影響があることが報告されました。この研究を機に、妊娠中の血糖管理が厳格に行われるようになっています。

 日本では、妊娠の前期と中期に血糖値の状態を確認します。妊娠糖尿病の妊婦は近年増加しており、妊婦の1割近くと推計されています。これは、妊産婦の平均年齢が以前より高くなっていることが影響していると考えられています。
妊娠糖尿病と診断されても、食事の内容を見直したり1回の食事量を減らしたりすることで、多くの人は血糖値が正常に戻ります。正常化しない場合は、出産までの間、インスリン注射を行います。海外では内服薬の治療もあり、日本でも今後、取り入れられるとみられます。

 出産と同時にほとんどの人で血糖値が正常に戻ります。ただ、一度妊娠糖尿病になった人は、次の妊娠時に再び発症する可能性が高く、妊娠初期から注意が必要になります。また、将来的に糖尿病になる確率が普通の人の7倍高いとの報告もあります。このため、出産後も生活習慣に注意し、定期的に血糖値の検査をすることが勧められます。

 冒頭の患者さんは、食事内容の見直しで、良好な血糖値を保っています。自分だけでなく、生まれてくる子供のためにと頑張っているようです。ただ、妊娠後期に血糖値が上昇する傾向にあるため、出産するまで気を抜かず、注意を続けることが大事になります。(しもじま内科クリニック院長 下島和弥)



引用元:
妊娠糖尿病 母子に悪影響、食べ過ぎ注意(産経ニュース)