生活習慣と妊娠の関係について、誰でも正しい知識を豊富に持っているわけではありません。アメリカのハーバード大学などの研究班が体外受精を利用する人に聞き取り調査を行いました。

体外受精を利用する人は何を信じているか

体外受精(IVF)を利用する人208人を対象とした聞き取り調査の結果が、専門誌『Fertility Research and Practice』に報告されました。2011年から2012年にかけて体外受精のために受診した男女が対象となりました。

オンラインでの質問によって、食事や生活習慣などについて、それぞれ体外受精の結果に影響すると思うか(害があると思うか、助けになると思うか)が調査されました。



博士号がある人で少なく、低収入でも少ない

調査の結果、女性と男性でそれぞれの項目に体外受精と関係があると思うと答えた人の割合は以下のようになりました。
•女性 ◦喫煙:71.7%
◦受動喫煙:86.1%
◦アルコール:69.2%
◦カフェイン:62.1%
◦妊婦用ビタミン

剤(葉酸、鉄など):88.3%
◦マルチビタミン:81.6%
◦ビタミンC:66.1%
◦ビタミンE:65.2%
◦ビタミンD

:68.1%
◦果物・野菜:83.7%
◦オーガニック食:57.6%
◦イブプロフェン:74.7%
◦かぜ薬・アレルギー

の薬:70.9%

•男性 ◦喫煙:68.1%
◦受動喫煙:76.0%
◦アルコール:65.4%
◦マルチビタミン:65%


男女ともに、博士号を持っている人はビタミン・アルコール・カフェインが影響すると考えている人が少ない傾向にありました。

また収入が低いほうが低炭水化物食、高タンパク食、全脂肪乳製品食が関係すると考える人が少ない傾向にありました。

研究班は考察の中で、患者が不妊の事実を受け入れようとして自分を責める中で生活習慣との関係を想像するという説明を仮定したうえ、影響しそうなもの・しそうにないものを適切に伝えることで患者の悩みを減らせるかもしれないと述べています。



患者が何を考えているか医師にはわからない

体外受精を利用する人が、多くの生活習慣を体外受精の結果と結び付けて考えているとした報告を紹介しました。

調査した地域などによっても回答の傾向は変わると思われますが、生活習慣が妊娠に影響するかもしれないと感じた経験は多くの人が持っているのではないでしょうか。

実際にははっきりしない部分も多く残っていますが、体外受精による出生は少量の飲酒と統計的関連が見られたとする報告、出生とカフェインの摂取量に関連はなかったとする報告などがあります。

「できることは何でもしよう」と思うのは自然なことかもしれませんが、関係がはっきりしないものにまで気を付けようと頑張りすぎても、不妊治療を続けるのがつらくなってしまうかもしれません。

紹介した調査が行われたことがまさに示しているとおり、患者が生活の中で何を心配しているかを医師は見抜けるわけではありません。心配なことがあれば、「こんなことを聞いていいのだろうか」と思ってもまずは質問してみることで、安心に近付けるのではないでしょうか。



執筆者

大脇 幸志郎
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参考文献



Lifestyle and in vitro fertilization: what do patients believe?



Fertil Res Pract. 2016 Oct 12.

[PMID: 28620538]

引用元:
体外受精にタバコは関係あると思いますか?教育・収入水準との関連 (MEDLEY)