若いがん患者が将来、子を持つ可能性を残す治療について日本癌(がん)治療学会が発表するなど、がん患者の生殖医療に関心が集まる中で、静岡県内の医療現場でも、がん患者に対する情報提供の必要性が高まっている。
 がん治療では、抗がん剤投与などの影響で妊娠が難しくなる場合があるため、がん治療を最優先した上で受精卵や卵子、精子、卵巣を凍結保存する温存療法が登場した。卵子凍結では卵子を採取、凍結保存した後、解凍して体外受精を行うなどして妊娠を目指す。
 県内では2015年、がん治療と生殖医療の従事者らでつくる「静岡がんと生殖医療ネットワーク」(通称SOFNET=ソフネット=事務局・浜松医科大)が設立された。ここ数年、採卵や精子の凍結保存を行う患者が徐々に増えているという。患者本人や保護者からの問い合わせもあるなど、希望者は増加傾向とみられる。

ソフネットと連携する沼津市宮前町のいながきレディースクリニックは15年以降、乳がんや白血病にかかった30〜40代の男女6人に採卵や精子凍結などを実施したという。稲垣誠院長は「がんの不安がある中で、妊娠のことを決めるのは難しい」と話す。その上で「本格的ながん治療前に検討しないと間に合わないことも。『(温存療法を)知っていれば』と訴える人も少なからずいる」と、がん医療の現場における早いタイミングでの情報提供の重要性を指摘した。
 浜松医科大の産婦人科医師でソフネット幹事の田村直顕氏はソフネットにカウンセリングを希望する人が多いことを踏まえ、「温存療法を選択するかどうかは本人次第だが、まずはがんと生殖医療について知ってもらえるよう、がん医療の現場や行政などと連携して情報提供を進めたい」と強調する。


引用元:
がん患者に生殖医療情報を 静岡県内「温存療法」問い合わせ増(@S[アットエス] by 静岡新聞)