妊娠をきっかけに、糖尿病より軽度の糖代謝異常「妊娠糖尿病」を発症する人が全国的に増えている。診断基準の厳格化や妊婦の高齢化が相まって、静岡県内でも増加傾向にあるとみられる。自覚症状に乏しい一方、適切に管理しないと母体だけでなく胎児にもさまざまな影響を及ぼすため、県内の産科医は「早期の発見、対応が重要」と注意を促す。
 年間約700件の分娩(ぶんべん)を扱う静岡済生会総合病院(静岡市駿河区)の産婦人科科長田村圭浩医師は「妊娠中は体内のインスリンの働きが低下し、誰でも血糖値が上がりやすくなる」と説明する。高カロリー食や肥満などは危険因子だが、原因は生活習慣だけでなく、遺伝的体質や高齢出産も糖代謝の悪化を招きやすい。「リスクが高い妊婦が集まる病院でもあり、妊娠糖尿病は増えている印象」という。
 妊娠糖尿病は放置すると流産や早産のリスクが高まるほか、羊水が過多になる、胎児の発育が悪くなる、逆に胎児が大きくなり難産になる、出生直後に子どもが低血糖を起こす−などのリスクがある。妊娠時は母児の安全のため、妊娠していない時より厳格な血糖値管理が必要になる。
 同病院では妊娠糖尿病と診断された場合、産婦人科と内科が連携して分娩までの管理に当たる。医師の指示の下、栄養士のアドバイスを受けて食事を見直し、改善しない場合はインスリンによる投薬治療を行う。胎児の状態によって健診回数を増やすことはあるが、安定して血糖値管理ができれば長期入院などは不要という。
 10月に同病院で第3子を出産予定の清水区の女性(41)は、妊娠初期から尿検査で尿糖の値が高い状態が続き、妊娠糖尿病の診断のための糖負荷検査を受けた。結果、血糖値は正常範囲だったが、悪化する可能性も指摘され、内科診察や食事指導を受けた。糖尿病歴はなく、家族にも患者はいない。「内科にかかるほどとは」と戸惑いもあったが、「状態に即して管理すれば、出産に影響はないと聞いてほっとした。早く見つけてもらってよかった」と話す。
■産後も要注意 浜松市は「手帳」配布
 妊娠糖尿病は、一時的に投薬治療などが必要になっても産後は自然に改善するケースが多い。ただ、改善しても将来的には糖尿病を発症するリスクが高いとされ、産後も継続的に検査を受けるなど注意が欠かせない。
 浜松市は2年ほど前から糖尿病抑制策の一環として、妊娠糖尿病と診断された人に対し、市内の産科医療機関を通じて「妊娠糖尿病手帳」を配布している。産後も血糖値の変化などを記録し、長期的な健康管理に役立ててもらう狙い。健康増進課の担当者は「女性の糖尿病患者は、産後家庭に入って健診から遠ざかり、深刻な状態になって初めて受診する人も多い。リスクの高い人に重点的に働きかけたい」と話す。
 日本糖尿病・妊娠学会の平松祐司理事長は「周産期の糖代謝異常は、母親だけでなく子どもの将来の糖尿病発症にも密接に関係する。産後まで一貫した管理が非常に大切になる」と強調する。

 <メモ>妊娠糖尿病の診断 日本糖尿病・妊娠学会は、2010年に国際基準に沿う形で診断基準を厳格化。15年には関連学会と基準を統一した。新基準の採用で妊娠糖尿病と診断される人の割合は約4倍に増加し、現在では妊婦の約1割は何らかの糖代謝異常と診断される状況という。
 現在はほとんどの病院で妊娠初期、中期に全妊婦を対象にスクリーニング検査を実施するため、定期的に健診を受けていれば見逃す心配は少ない。血液検査で随時血糖値が高い場合、ブドウ糖溶液を摂取して血糖値の変化をみる糖負荷検査を行い、診断する。


引用元:
「妊娠糖尿病」の対応早期に 妊婦高齢化で増加傾向(