がんのある乳房を切除する「乳房切除術」の新しい方法として、近年、乳頭や乳輪、乳房の皮膚を残して切除する「乳頭乳輪温存乳房切除術」が注目されている。その長期的な安全性について検証した研究から、この術式によって乳がんの再発リスクは上昇しないことが示された。詳細は「Journal of the American College of Surgeons」7月17日オンライン版に掲載された。


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この研究を率いた米マサチューセッツ総合病院のBarbara Smith氏によると、近年、外見上の問題から乳頭乳輪温存を希望する乳がん患者が増えているという。乳頭乳輪温存乳房切除術では、術後の胸が自然に見えるだけでなく、乳房切除術と同時に乳房の再建術も受ける「一期再建」を選択できることが多い。

同氏は「医師として、外見のために患者の安全が脅かされることは望まない」とした上で「女性の多くは乳頭が残っている方が自分らしい本来の身体であると感じやすい」と説明。また、今回の研究について「乳頭乳輪温存乳房切除術後、かなり長期にわたって追跡した研究の1つ。その結果は、少数の例外を除けば乳頭を残しても安全であることをあらためて裏づけるものとなった」と話している。

今回の研究でSmith氏らは、2007〜2012年に乳頭乳輪温存乳房切除術を受けたステージ0〜3の乳がん患者297人の転帰を追跡した。このうち14人は両側の乳房にがんがあり、両側の乳房切除術を受けたため、手術数は計311件だった。中央値で51カ月の追跡期間における乳がんの再発率は約5.5%だったが、再発例で乳頭乳輪が関わるものはなかったという。なお、同氏によると、この対象集団での再発率は標準的な乳房切除術後の再発率と同程度だった。

この研究報告を受け、米ニューヨーク大学(NYU)ウィンスロップ病院乳腺外科のVirginia Maurer氏は「乳頭乳輪温存術を診療に取り入れるために、長期の成績の報告を待っていたわれわれ医師にとって勇気づけられる結果だ」と話している。また、米レノックス・ヒル病院乳腺外科のLauren Cassell氏は「患者も医師も、これまで乳頭乳輪の局所再発リスクを警戒してきたが、今回の研究により恐怖心が安心感に変わった」と述べている。(HealthDay News 2017年7月19日)

▼外部リンク
・‘Nipple-Sparing’ Mastectomies Don’t Raise Odds of Cancer’s Return: Study


引用元:
乳がん、乳頭乳輪温存乳房切除術による再発リスクは上昇せず(