中国で生殖医療ビジネスが、成長めざましい有望分野として注目を集めている。生活様式の変化による晩産化や昨年の「二人っ子政策」施行により、妊活や不妊治療の需要が拡大しており、生殖補助医療市場の規模は約150億ドル(約1兆6674億円)に達する見通しだ。しかし、中国国内では施設の不足、高額な治療費、複雑な規制などの問題も浮上しており、海外で先端医療を受けるツアーも大盛況。関連医療ビジネスの活況は世界的な広がりをみせている。
◆子供2人を奨励
中国北部に住むチャンさんは不妊治療のため妻と一緒に北京パーフェクトファミリー・ホスピタル(家円医院)に通っている。建設業を営むチャンさんは38歳。事業を軌道に乗せるため35歳の妻と懸命に働いてきた。ようやく子供を持つ余裕ができたときには、自然妊娠が難しくなっていた。チャン夫妻のような不妊に悩む中国人は数百万人いるとされる。
チャンさんは、体外受精(IVF)1回ごとに10万元(約164万円)を支払っているという。米BISリサーチによれば、IVFだけでも中国の市場は2016年時点で6億7000万ドル相当で、22年には15億ドル規模に膨らむと予想されている。
「経済状況が良くなったため子供を欲しがっている人は多い。私たちと同じ悩みを抱えている友人は周囲にたくさんいる。IVFを試みている人もいるのでオープンに話ができる」とチャンさんは話す。
中国はようやく「一人っ子政策」を廃止、子供2人の出産を奨励する政策にかじを切った。進み過ぎた少子化と労働力縮小に歯止めをかけるのが狙いだ。だが皮肉にも産児制限の撤廃により、男性の精子数減少や晩産化といった要因から不妊に悩む人々が大勢いることが浮き彫りになった。
米外交問題評議会(CFR)のグローバルヘルス担当上級研究員の黄延中氏によると、中国での精子検査の結果、1ミリリットル当たり精子数が、1970年代前半の1億個から2012年には2000万個まで激減していることが分かった。経済発展や公害、晩婚・晩産化などに伴うストレス増加に加え、喫煙や飲酒も一因となっている可能性を同氏は指摘する。
一方で、キャリア形成を優先させるため出産を先送りすることを選ぶ女性も増えている。その結果、中国では生殖補助医療の需要が増大しているのだ。
中国国家衛生計画出産委員会の推計では、中国には昨年時点で451の精子バンクと不妊治療免許を持つ医療機関がある。だが人口14億人を抱える大国の需要には追い付いていない。
問題は治療費や施設だけではない。中国では生殖医療に関する規制が複雑かつ厳格なため、選択の自由を求めて海外で治療を受ける人が増えている。例えば中国では独身の女性が卵子を凍結保存することは許可されていないため、規制のない海外への生殖医療ツアーの需要は高まっている。
◆性別選択が人気
不妊治療を提供するオーストラリアのバータス・ヘルスは中国企業から提携のアプローチを定期的に受けるものの、同国での免許取得は難しいと、同社のスー・シャノン最高経営責任者(CEO)は語る。現在は、中国の医療ツアー代理店と協力し、患者を豪州とシンガポールのクリニックで受け入れているという。
米カリフォルニア州ビバリーヒルズにある南カリフォルニア生殖医療センターの共同創業者で医療ディレクターを務めるマーク・サリー
「中国では、生殖医療技術を自由に選択できるだけの社会経済的手段を持った人が増えている」とサリー氏は語る。同センターのクリニックでは、着床前遺伝子診断を行って胚(はい)の性別を見分けるサービスも提供している。性別の選択は中国では禁止されているため、中国人の患者の間で非常に人気が高いという。
マレーシアとシンガポールに上場しているIHHヘルスケアやタイのバムルンラード病院、バンコク・ドゥシット・メディカル・サービシズといった海外の医療機関・病院運営会社は中国人患者増加の恩恵を受ける公算が大きいと、サンフォード・C・バーンスタインのアナリスト、ローラ・ネルソン・カーニー氏はみている。
前出のチャン夫妻は、不妊治療のため何度も通院が必要だ。卵子と精子を採取するため昨年11月に病院に行き、今年3月にも諸準備のため通院した。「でも、もし最初の子供が双子でなければ2人目も欲しいと考えている」と話した。(ブルームバーグ Li Hui、Natasha Khan)
引用元:
一人っ子政策 落とし子 中国、不妊治療ビジネスが成長分野に(SankeiBiz)