チクッと一刺しした後、かゆみと、場合によっては病気を残して去っていく−−。今年もまた、蚊が活発に動き回るシーズンを迎えた。なるべくなら、蚊を避けて暮らしたい。身を守る対策についてまとめた。

●暑すぎるのは苦手

 日本には約100種類の蚊がいるといわれている。身近にいてよく知られているのはヤブカの一種・ヒトスジシマカやイエカに属するアカイエカだ。日中から夕方にかけて活動が盛んになるのがヒトスジシマカ。デング熱などの感染症を媒介する。一方、アカイエカは夕方以降に活動。夜間に「プーン」と飛び回り、睡眠を邪魔する存在だ。

 アース製薬ブランドマーケティング部の中辻雄司さんによると「ヤブカはもともと北日本では見られなかったが、温暖化の影響で生息域はだんだん北上している」という。最も活発に動く気温は25〜30度程度。猛暑日など暑すぎるときは蚊も活動が鈍り、死ぬこともある。

 蚊は普段は、花の蜜などを吸って生きている。人の血を吸うのはメスが産卵するときだけ。卵に必要な高たんぱくの栄養源として、ほかの動物の血を必要とするため、人が出す汗などのにおいや、呼気に含まれる二酸化炭素を感知して近づいてくる。子どもが刺されやすいのは体温が高く、よく汗をかくから。お酒を飲んだ人が刺されやすいのも同じ理由で、飲酒によって体温が上がり呼吸数が増えるからだという。キャンプやバーベキューなど、アウトドアで飲酒する機会が多い人は要注意だ。

 ●まず増やさない

 蚊の発生対策は成虫を駆除するよりも、卵を産ませないことや幼虫(ボウフラ)を退治することのほうが有効だ。ボウフラは水中で成長するため、水のないところからは蚊は発生しない。東京都は、国内でデング熱が流行した2014年の翌年から、6月を「蚊の発生防止強化月間」と定め、都民への啓発に努めている。「今年で3年目だが、蚊に対する関心や意識は高まっている」(都環境保健衛生課)

 対策は、不要な空き缶や古タイヤなどは片付け、家の周囲に水がたまるものをなくす▽植木鉢の受け皿、墓地の花立てなど水が必要なところは、こまめに清掃し、週に1度は水を替える−−など。ヒトスジシマカの卵は、1CCの水があればふ化が可能だという。また、アカイエカは気温などの条件がそろえば、10日ほどで卵から成虫になってしまう。シーズン中は、少量のたまり水も見逃さないことが大切だ。

 ●虫よけは表示見て

 だが、どんなに注意していても、蚊の発生を完全に防ぐことはできない。近づきにくくする方法はないだろうか。

 カレンソウやシトロネラ、ゼラニウム、レモングラスなど虫が嫌がるにおいを出すというハーブの存在も知られるが、「植えたら1匹も来なくなる、というわけではないので、実用的な『蚊よけ』としては勧められない」と専門家は口をそろえる。確実に駆除したいなら、蚊への効果をうたう蚊取り線香などの薬剤に頼らざるを得ない。屋外用、屋内用などさまざまな商品がある。

 肌につけるタイプの市販の虫よけ剤は、用法用量を守って使用するのが基本。注意したいのは忌避剤として使用される化学物質「ディート」が含まれる製品で、厚生労働省は子どもの使用について、生後6カ月未満は使わない▽6カ月以上2歳未満は1日1回▽2歳以上12歳未満は1日1〜3回▽顔には使わない−−などと目安を示している。赤ちゃん用を購入する際は、表示をよく見て選びたい。

 アレルギーなどで薬剤が使えない人は、長袖、長ズボンや靴下で肌の露出を減らし、汗はこまめに拭いたり洗い流したりする。「蚊は黒っぽい色に寄ってくるので、白い服のほうが刺される確率は下がるでしょう」と中辻さんはアドバイスする。【銅山智子】


引用元:
蚊を避けて暮らすには  (毎日新聞)