赤ちゃんがある程度の月齢になると、ママの後をついて離れない「後追い」が始まります。成長が感じられてうれしい反面、自由がなくて困っているママも多いですよね。そこで、「後追い」の意味や対策法などを臨床心理士の木村美奈子さんに教えていただきました。


「後追い」にはどんな意味があるの?



「後追い」とは、ママが自分の側から離れたり姿が見えなくなったりしたときに、赤ちゃんが泣きながらママの後を追いかけること。どこに行くにもついてくるのでトイレにもゆっくり行けないし、家事がはかどらなくて困る…というママも多いと思います。では、この後追いには一体どんな意味があるのでしょうか?

「後追いは対人面の発達に伴って起こる自然な現象です。自分と他者の区別がつき、他者であるママとの間に愛情関係が育ってきた証だと考えられます」

こう教えてくれたのは、子育て広場や保健センターなどで乳幼児の子育て相談に15年以上従事されてきた、臨床心理士の木村さん。現在は夜間断乳やねんねトレーニング(ネントレ)のレッスンを行っており、悩めるママたちにとって心強い存在です。


いつ頃からいつ頃まで起こるもの?
個人差はあると思いますが、後追いはいつからいつまで起こるものですか?

「多くの場合、生後6カ月頃から始まり、1歳半を過ぎる頃までには徐々に消失していきます」

確かに、10カ月健診の質問項目の中に「後追いはしますか」というものがありました。この月齢で起こるのはなぜでしょうか?

「生まれたばかりの赤ちゃんは、他人はもちろん自分自身も認識することができません。それが生後2カ月頃からだんだんとママの顔を記憶できるようになり、いつも安心感をもたらしてくれるママに対して愛情関係を築いていきます。6カ月頃になると自分の手や足の存在に気付き、自分の体とママの体が別々だと認識していくのです」

自分とママが別の存在と気づいたからこそ、目の前からいなくなると不安になるということですね。

「そうです。この時期の赤ちゃんは、まだ目に見えることしか理解できません。ママの姿が見えなくなると、ママの存在そのものがなくなってしまったと思ってしまうのです。理由もわからず突然大好きなママの姿が見えなくなった=消えてしまったとなれば、泣きながら後を追いかけてくるのも納得できますよね」
この世の終わりかのように大泣きしている気持ちが少しわかった気がします。

「後追いは、目の前に姿が見えなくてもママがいるとわかるようになると、徐々に減っていきます。これを発達心理学では、対象恒常性の獲得といいます」

「ママの姿が見えなくなってもママが消えてしまったわけではない、すぐに戻ってくると理解できるようになることで、後を追いかけなくても不安にならずに済むのです。また、言葉の理解が進むことも、後追いをしなくなる理由のひとつです」


不安を安心感に変える環境作りを!



とはいえ、ママが行く場所にずっと赤ちゃんがついてくると、危険なこともあるかと思います。後追いをする赤ちゃんがいる家庭で、注意すべきことはどんなことでしょうか。

「できるだけ赤ちゃんがママの姿を確認できるような環境にしておくことが一番です。ベビーゲートなどで危険な場所にはついてこられないように対策をしている人も多いと思いますが、大切なのは離れていても目を合わせたり、声をかけたりして、『抱っこや相手をしてくれないのは自分のことが嫌いだからだ』と思わせないようにすること。最愛のママが『いなくなるかも?』という不安を安心感に変えてあげることがとても大切です」

少しでもママの時間が確保できるように、赤ちゃんの興味関心を引く良い方法があれば教えてください。

「子どもはママと同じことをしたがりますよね。何でも危ないから渡さない、触らせないのではなく、料理中であればボウルやしゃもじ、野菜など危険ではない物を持たせてあげるだけで機嫌よく遊んでくれたりしますよ。洗濯のときであれば、『これを畳んでくれる?』とハンドタオルなどを手渡すと、たためなくてもママの真似をしようとします。このように少し工夫をして本人が満足できる環境を作っておくことをおすすめします」

また、「この時期だけ」と諦めて、ある程度家事を手抜きするのも一つの手だそう。

「調理の仕方を工夫して時短を心がけることも大切ですが、後追いの時期はほんの一時。『すべて完璧にやらなくちゃ!』と頑張りすぎてママが疲れてしまっては、家族みんなにとって良くありません」


後追いしない子どもは何か問題があるの?
逆に、後追いをしないという子どももいるかと思います。これは何か問題があるのでしょうか?

「後追いがまったく見られないという場合は、対人面になんらかの育ちにくさを抱えている可能性があります。とはいえ、不安感よりも興味関心が強いタイプの子は、ママのそばから離れていろいろな物に自分から接していきますし、後追いをしないと必ずしも対人面に問題があるというわけではありません」

「例え、べったりとくっついてこなくても、うれしいときや驚いたときにママを見て、感情の共有をしようとする様子が見られればひとまず様子を見ていいでしょう。もし、後追いをしないだけでなく、触られたり抱っこされたりするのを極端に嫌がる、視線が合いづらいなど、何か心配なことがある場合は子育て専門機関などに相談してみてくださいね」

程度の差はあれ、多くの赤ちゃんに見られる後追い。その理由は、今後いろいろな人との関係を築いていくための大切な発達の証とのことでした。そうわかると、泣いてついてくるわが子がより愛おしくなりますね。大変なことも多いですが、パパにも協力してもらいながら親子ともにストレスがないようにこの時期を乗り切りましょう!

(文:水谷 映美)
(監修:木村美奈子さん)

引用元:
赤ちゃんの「後追い」はいつから? 注意点&上手な対処法も紹介(ウーマンエキサイト)