病気で妊娠できない女性が、匿名の第三者から卵子の提供を受けて出産した。国内初とされる。
日本では生殖補助医療に関する法制度がないまま、現実が先行している。医療の透明性と安全性を担保し、生まれた子の権利を守るためにも、法的ルールが必要だ。
卵子提供を仲介した神戸市のNPO法人によると、ボランティアが無償で提供した卵子と夫の精子から受精卵を作り、早発閉経の40代の妻に移植した。今年1月に女児が生まれたという。
NPO法人は、提供者の条件や生まれた子どもが出自を知る権利の保障など独自の「ルール」を定めている。無論、幅広い社会的な合意に基づくものではなく、法的拘束力はない。
第三者からの卵子提供は、厚生労働省の審議会が2003年に条件付きで容認する見解を示し、国に法整備を求めた。だが、14年たった今も実現していない。
このため、多くの女性が毎年、海外に渡って卵子提供を受け、出産しているという。
生まれた子には遺伝上の母と産んだ母がいることになる。現行の民法が想定していない事態だ。
「産んだ女性が母」という判例はあるが、親子関係にトラブルが生じる余地があると指摘されている。子どもの法的地位に不安定さが残ることも見逃せない。
優先すべきは、こうした子どもの権利と福祉を守ることだ。
自民党の部会が15年、卵子と精子の提供による出産後の親子関係について「産んだ女性を母」「夫を父」と規定する民法の特例法案をまとめた。国会提出を急ぐべきだ。併せて、生殖補助医療の法的ルール作りに党派を超えて取り組む必要がある。これ以上、法整備を先送りすべきではない。
第三者が関与する生殖補助医療を望む不妊カップルは多い。だが、社会的な合意や立法措置に基づくルールが未整備なまま、無制限に広げるわけにはいかない。
家族観や生命倫理にも関わる問題である。国民的な議論を深めていきたい。
引用元:
第三者卵子出産 法的なルール作りを急げ(西日本新聞)