5月に入り、子どもの新生活も少し落ち着き始めたこの時期。PTA活動が本格的に始動し、「こんなはずじゃなかった」「PTAをやめたい」という思いが芽生え始めた親たちも、多いのではないだろうか。

そこで今回は、『ある日うっかりPTA』(税別1,300円/KADOKAWA)の著者で、PTA会長を3年間にわたり務めた経験を持つフリーライターの杉江松恋さんにインタビュー。PTA活動に参加する上で、心得ておきたいことについて聞いた。

「あれもこれもやらなくちゃいけない」が保護者を苦しめる

――2017年の頭ぐらいから「#PTAやめたの私だ」というハッシュタグが非常に話題になっていました。入会の意志を問われることなく、役職の押し付け合いがあり、役員になれば非常にタスクが多く、人間関係にも悩まされる。そこで「PTAをやめよう」「PTAには入らない」という声が大きくなったと考えられます。一連の動きや報道などを、杉江さんはどうご覧になっていましたか?


PTAの中にある古い体質が問題になっているのだと思います。例えば、本来は自由参加のはずなのに、強制参加になっている。また、中心的な人物の意志に従わない場合、組織から弾き出されてしまうことがあるといった点です。民主的のようでいて、声の大きい人が勝つような組織になっていることもあると感じています。

一番の問題は「先例の踏襲」でしょう。「これをやらなくちゃいけない」「あれもやらなくちゃいけない」という圧力が、PTAの人たちを苦しめていると思います。僕自身も好きではなかったのですが、大掛かりな周年行事や、運動会でのPTAの出し物などが、その一例です。先例の踏襲に対して「NO」を突きつけるのは非常に有効だと思いますし、「#PTAやめたの私だ」もそういった意見の表れの一つだと捉えています。

学校の都合によってスケジュールが左右される




『ある日うっかりPTA』(税別1,300円/KADOKAWA)の著者で、PTA会長を3年間にわたり務めた経験を持つフリーライターの杉江松恋さん


――「#PTAやめたの私だ」のツイートを見ていると、「PTAを改革しようと思ったのにダメだったのでやめます」という声が目立ちました。一方、杉江さんはPTA会長として次々と改革を成功させていますよね。本書の帯文にも「変人PTA会長が、小さな革命を起こした!」と書かれています。


僕が変えたことの一つとしては、小さなことですが、PTAの入会承諾書を書いてもらうということがありました。今まではそれがなくて、自動的にPTAに入ることになっていたんです。

ただ、革命ということでもないんですよ。僕がPTA会長をやめた後は、どうなっているか分かりませんから。「あの人がいろいろ変えたけれど、もうやめよう」ってなっているかもしれない(笑)。

――PTA役員の活動は、仕事の多さによる負担の大きさも問題視されています。率直な疑問ですが、フルタイムで働いている人は、PTAの仕事をこなせるものなのでしょうか?


昼間、フルタイムでお仕事をされている方は、かなり大変だと思います。中には、月に2〜3回集まりがある学年部の仕事など、学校に出向くことを求められる仕事もあります。そうなった場合、有給を取得する必要がありますし、学校の都合によってスケジュールが左右されることが多いので、先の予定が立たないというのも問題です。

本来はそういう方が参加しやすい環境やペースを作らなければいけません。それは学校側、PTA側が変わらなければいけない部分だと思います。

自分を犠牲にしてまで、PTA活動をしなくてもいい

――自分を犠牲にしてまでPTA活動をしなくてもいいのではないかというのが杉江さんのお考えと伺いました。


はい、しなくていいと思います。実際、中学校のPTAはやめました。校長が嫌いだったんです(笑)。

――PTA活動を負担に感じて悩んでいる方に対して、杉江さんがアドバイスを送るとすると、どのようなものになるでしょうか?


PTA活動をすることで、自分の身体や精神に大きな負担がかかったり、家族の仲が悪くなったりするのでしたら、やめちゃってもいいと思います。PTAと家庭、どっちを取るかなら家庭ですよ。PTAは、そこまで犠牲にしてやるものじゃありません。

正直に「負担になっているのでやめます」とPTA会長に話してください。こういう状況が生まれたのは、組織のトップである会長の責任ですから、会長に話すことが重要です。PTA会長が信用できない場合は、組織と距離を置いていいと思います。PTA活動に最初から参加したくない人は、会費だけ払って知らんぷりしていればいいでしょう。

それから、覚えていてほしいのは、PTAの問題や悩みは先生に相談しても大丈夫だということです。小学校の場合、副校長の重要な仕事の一つが「PTAへの参加」になっています。「子どもと関係ないことで先生に相談してはいけない」と考えるのは間違いなので、何かあったら相談してみるべきです。

PTAから距離を置くことで、子どもがいじめられるんじゃないかとか、先生に邪険にされるかもしれないと心配する人もいるかもしれませんが、もしそんなことが行われたとしたら、それはろくでもない学校だと思います。教育委員会へ相談してみてください。

――PTA活動に参加しようとする人にも、アドバイスをお願いします。


おすすめのプランは1年猶予をもらうことです。「今年は無理だが、来年はできるかもしれない。準備のために、どのような仕事か教えてほしい」と伝えることをお勧めします。"PTA役員を務めるのは転職と一緒"と考え、どんな仕事があって、どんなリスクがあるのか、よく調べてから引き受けた方がいいと思います。

――最後に、杉江さんがPTA活動に参加されて、良かったと思うことはどのようなことですか?


その地域で生活している社会人として、いろいろな勉強ができました。それに尽きます。道であいさつする知り合いが増えましたし、地区の行政のことも知ることができました。地域への愛着も増しましたし、学校に足を踏み入れることで子どもたちへの愛着も増しました。あと、自分が少し大人になりましたね(笑)。


引用元:
"先例の踏襲"という圧力を回避するには?--PTAをやめたい人が取るべき処世術マイナビニュース