妊娠中は風疹にかかってはいけないと聞いたことがある方も多いでしょう。今後妊娠を望む方や、すでに妊娠中の方は、風疹にかかるとどんなリスクがあるのか気になりますよね。妊婦が風疹にかかる経緯や症状、赤ちゃんへのリスクを紹介します。今まで風疹にかかったことがない方はチェックしておきましょう。







この記事の監修ドクター

産婦人科専門医 中林稔 先生

日本医科大学卒業。東京大学医学部付属病院で研修後、三井記念病院医長、虎の門病院医長、愛育病院医長を経て現在三楽病院産婦人科長。

診療のみならず、学会・各地講演をはじめとする医学の普及活動を行う傍ら、教育にも幅広く従事しており、2008年には中林助産師学院を共同設立。自ら講師を務め、6年間連続助産師国家試験合格率100%を達成中。

風疹とは

風疹は風疹ウイルスによる感染症
風疹は風疹ウイルスが原因となる感染症で、3日麻疹(はしか)とも呼ばれます。感染すると発熱、リンパ節の腫れ、発疹といった症状が現れます。子どもの発症より大人の感染のほうが多いのが特徴で、日本では5年ごとに流行がありました。現在は予防接種により大規模な流行はなくなりましたが、近年再び流行の兆しがあります。

感染の傾向としては、感染者の9割が成人で、男性のほうが多いです。女性は20代の感染が多くなっています。成人の感染者が増えた理由は、1994年まで中学生の女子のみ定期接種だったのが、1995年4月からは学校での集団接種はなくなり、病院での個別接種となったためです。

風疹は感染力が強く、1人の発症から5〜7人感染することもあります。現在は大人の発症数も増えており、子どもより大人のほうが重症化しやすいことから、注意が必要な感染症とされています。

風疹の感染経路
風疹ウイルスの感染経路は、飛沫感染です。感染している人の咳、くしゃみなどにウイルスが含まれ、空気中に放出され、それを吸い込むことにより感染します。風疹ウイルスは重いため、感染者から1〜2mくらいで地上に落ちていきます。空気感染はなく、感染者の近くにいなければ問題ありません。

また、感染者の手にウイルスが付着し、ドアノブなどに触れるなどでの接触感染もします。感染していない人の手にウイルスが移り、手で食べることで体内に侵入していきます。

妊娠中に注意したいのが、胎児への血液感染です。ママが風疹ウイルスに感染すると1週間ほどで血液中にウイルスが入り込み、お腹の赤ちゃんへ感染してしまいます。

風疹は一度感染すると生涯免疫力がつくられるため、その後感染することはないとされています。

大人が風疹にかかったときの症状
風疹の代表的な症状は、38度以上の発熱、発疹、リンパ節の腫れです。ウイルスの感染から14〜21日くらいの間に症状が出ます。子どもの感染では、発熱がなかったり、感染しても症状が起こらなかったりといったケースもあります。

大人は子どもと比べて症状が重くなりやすく、症状が出る期間が長くなります。風疹は3日麻疹(はしか)といわれるように通常3日くらいで改善しますが、大人は1週間近く続くケースもあります。

妊婦の風疹で起こる「先天性風疹症候群」

先天性風疹症候群とは
妊娠中に風疹にかかり、血液を通してお腹の赤ちゃんに感染し、子どもが奇形になる先天性疾患です。

先天性風疹症候群で赤ちゃんに起きる症状
低体重、眼球の異常、難聴、心奇形、中枢神経障害、小頭症などです。また、血小板減少性紫斑病、肝脾腫、肝炎、溶血性貧血、間質性肺炎、大泉門膨隆などが一時的な症状として現れることもあります。どのくらいの奇形が発生するかは、妊娠中のどの時期に感染したかによって異なります。

この中でも頻度が高いのが、先天性心疾患、難聴、白内障です。先天性心疾患と白内障は、妊娠3か月以内のママの感染で発症しやすく、難聴は3か月以降の感染でも発症します。
妊娠の風疹ワクチン接種について

妊娠でも風疹ワクチン接種は可能?
赤ちゃんの先天性疾患は、それ自体の治療法がありません。そのため、妊娠前に感染を予防することが大切です。妊娠を希望している方は抗体の有無を調べてもらい、必要なら予防接種を受けましょう。男性も年齢によっては予防接種を受けてない方が多いため、一緒に検査してもらうのがおすすめです。

すでに妊娠中の方は予防接種を受けることはできません。抗体が不十分だとわかったら、人混みを避けできるだけ感染しないようにしてください。旦那さんや子どもが感染すると、妊婦さんへのリスクも高まるため、妊娠がわかったら家族に予防接種を受けてもらうのがベターです。
妊娠中に行われる抗体検査
今まで風疹にかかったかわからない方は、病院で抗体検査を受けましょう。また、子どものころに予防接種を受けた、あるいは発症記憶があるという方でも、勘違いしている可能性があるため、抗体検査を受けておいたほうが安心です。

抗体検査費用は、妊娠を希望する方を対象に無料としている自治体もあります。抗体検査は血液検査で、1〜3週間後に検査結果がわかります。妊娠中の方は病院で抗体検査を必ず行います。妊娠中に抗体が不十分だとわかったら、感染予防をしなければなりません。

妊婦が風疹にかかってしまったら

風疹感染が疑われるときに行う血液検査
抗体が不十分でない方で、妊娠中、発熱や全身の発疹がみられたら、風疹の疑いがあります。子どものころに予防接種を受けていても、1回のみだと万全ではなく抗体が不十分の可能性もあるのです。

もし風疹が疑われる場合は、かかりつけの産婦人科を受診してください。その際には、HI法と風疹IgGと風疹IgMの3つの血液検査をします。なお血液検査は2週間をおいて2回受ける必要があります。

羊水検査で赤ちゃんへの影響がわかる?
母体が風疹にかかっていたとしても、かならずしも赤ちゃんに感染するとは限りません。赤ちゃんが感染したかをはっきりさせるためには羊水検査が必要です。羊水検査は一部の医療機関でしか受け付けていないため、かかりつけの産婦人科で確認してください。
妊娠中は徹底して風疹予防

人が多い場所に行かない
風疹は感染者からの飛沫感染・接触感染となるため、人が多い場所に行くのは避けましょう。
家族に予防接種を受けてもらう
男性は30〜40代の人に抗体が不十分の人が多く、子どもも幼稚園や学校など集団生活のなかで感染しやすいため、予防接種をしてもらいましょう。子どもの場合は、1歳と小学校入学前1年間の幼児が定期接種の対象で、自治体により接種費用を助成してくれます。
まとめ
妊娠中に風疹にかかってしまうと、赤ちゃんに先天性奇形が発生する可能性があります。妊娠を希望する方は、検査や予防接種を受けておきましょう。すでに妊娠している場合でも、かならずしも赤ちゃんに影響が出るとは限らないため、不安がらずに検査を受けてみてください。


引用元:
【医師監修】妊婦の風疹は赤ちゃんに影響が! 先天性風疹症候群の症状・予防法(日刊アメーバニュース)