人の知能に関連する52の遺伝子を発見したとする研究論文が22日、発表された。うち40については、この種の遺伝子として同定されたのは、今回が初めてだという。

 また、今回の研究では、知能と自閉症との意外な関連性も明らかになった。将来的に、この成果が自閉症の発症原因解明の助けになる可能性もある。

 米科学誌ネイチャー・ジェネティクス(Nature Genetics)に掲載された論文によると、新たに発見された「知能遺伝子」群により、調査対象者数万人の知能指数(IQ)テスト結果にみられる差異の約20%を説明することができるという。

 今回の研究計画を立案したオランダ・神経ゲノミクス認知研究センター(Center for Neurogenomics and Cognitive Research)の研究者、ダニエル・ポスツマ(Danielle Posthuma)氏は「研究では、知能指数(IQ)への相当量の遺伝的影響を検出することに世界で初めて成功した」としながら、「知能の生物学的根拠に関する知見をもたらす成果となった」と続けた。

 新たに発見されたIQ上昇に関連する遺伝子変異の大半は、特に神経細胞の分化や「シナプス」と呼ばれる神経情報の伝達経路の形成など、脳内における細胞発生の制御に関与するものだ。

 科学者30人からなる国際研究チームは、13件の先行研究で収集された、欧州系被験者7万8000人分の遺伝子プロファイルと(IQテストに基づく)知能評価を詳細に調べた。

■自閉症との関連

 IQの高さに関連する遺伝子変異の多くは、就学年数が長い、幼児期の頭のサイズが大きい、背が高いといったその他属性との関連がみられた。喫煙習慣を絶つことに成功するといったものもあった。

 しかし、最も強く、そして最も驚くべき関連の一つは、自閉症との関連だったとポスツマ氏は指摘する。

 ポスツマ氏は、AFPの取材に「高いIQ値に関連する遺伝子変異は、自閉症スペクトラム障害のリスク上昇にも関連している」と述べ、特に「SHANK3」遺伝子は「この関連性を説明するための非常に有力な候補」と説明した。

 逆に、統合失調症や肥満症を患う被験者では、特定のIQ関連遺伝子が存在しないケースがより多くみられたという。

■複数の遺伝子変異による特定のパターン

 知能遺伝子をすべて見つけ出すには数百万人分のゲノム(全遺伝情報)を解析する必要があり、これを行うための生のデータと計算機能力はまだ手の届かないところにあると、ポスツマ氏は話す。

 そして「知能に関しては、数千の遺伝子が存在する」「われわれは52の最も重要な遺伝子を検出したが、実際にはもっと数多くある」ことを指摘した。

他方で、知能の測定結果をめぐっては、遺伝子で説明できる割合はたかだか50%程度だという点で、専門家らの意見は一致している。「頭の良さ」に寄与する遺伝子の挙動をすべてマッピングできたとしても、IQ値や人生で成功するかといったことを予測するには不十分かもしれない。

 ポスツマ氏は「これら遺伝子の影響については、すべてがそれぞれ独立したものとして捉えられている」ことを指摘しつつ、「知能を高める要因となるのは(知能遺伝子の純粋な個数だけではなく)複数の遺伝子変異による特定のパターンなのかもしれない」と続けた。

 同氏はまた、「成功」に結び付く主な要因は、自身の大脳皮質(灰白質)を、そのサイズの大小を問わず鍛えることだと述べる。もし遺伝的に大きな素質を持つ人が「学習に全く力を注がない道を選ぶなら、それによって成功のチャンスは間違いなく小さくなるだろう」とした。(c)AFP/Marlowe HOOD


引用元:
「知能遺伝子」52個を特定、IQ差の2割を説明 国際研究(AFP=時事)