乳がんの罹患(りかん)率が年々上昇を続けている。平成27年度は、30〜64歳の働き盛りの女性のがん死亡原因の1位に。早期発見が大切だが、がん検診では発見が難しいケースもある。昭和大医学部乳腺外科の中村清吾教授(同病院ブレストセンター長)に早期発見に向けた課題を聞いた。(村島有紀)

検査精度の限界

 乳がんになる女性は年間約9万人に上り、40代後半に罹患のピークを迎える。乳房の外側の上方にできるケースが全体の5割と最も多い。しこりの大きさが2センチ以下で、リンパ節や別の臓器に転移していない段階の「早期がん」なら、10人中9人の命が助かる。

 早期発見の手段として、国が自治体を通じて公的検診を実施しているのがマンモグラフィ(乳房X線撮影)だ。40歳以上の女性に、2年に一度受けることを推奨している。

 乳房を2枚の板に挟んで圧迫し、薄い状態にしてX線撮影する。しこりになる前の早期の乳がん(石灰化)も発見できる。

 ただし、乳腺が発達して乳腺密度が高い閉経前の女性は、乳腺もがん組織と同様に白く見えるため、がんを見つけにくい。中村教授は「先行してマンモの検診を始めた欧米でも、現在では対象年齢を40代後半や50歳以上に引き上げている。乳腺のタイプによってマンモの精度は変わってくる」とする。


高濃度乳房

 乳房は、(1)乳腺数がほぼない「脂肪性」(2)「乳腺散在」(乳腺が10〜30%残る)(3)「不均一高濃度」(50〜60%残る)(4)「高濃度」(80〜90%残る)−の4種に分けられる。

 (1)の場合はマンモでがんが見つかりやすい。しかし、アジア系の女性は欧米系と比べて(4)が多く、検診受診者の4割が(3)と(4)の「高濃度乳房」と推計される。「年齢が若い」「授乳歴が少ない」「ホルモン補充療法を受けている期間が長い」人ほど(4)が多くなる傾向がある。

 このため、厚生労働省は、マンモに超音波(エコー)検査を併用することで死亡率の減少効果がどれくらいあるか、大規模な比較試験を実施中だ。これまでの調査では、40代女性へのエコーの追加でがんの発見率は1・5倍に上昇した。中村教授は「マンモを受けたら自分がどのタイプの乳房なのかを聞くことが大切。自分の乳腺のタイプを知ってエコーを追加するかを考えてほしい」と話す。

 公的検診では、一部の自治体で受診者に乳腺のタイプを通知しているが、現状では単に「異常なし」と知らせている自治体が多い。

 日本乳癌(がん)学会や日本乳癌検診学会などは、検査方法の問題や、受診者側に正しい理解が普及していないことなどから、「乳房構成を受診者へ一律に通知することは時期尚早」としている。ただ、将来の通知は必要と判断し、市町村に対し、受診者への説明や指導の態勢整備を求める提言を先月、発表した

若年性乳がん

 40歳未満は乳腺が発達しているため、マンモによる公的検診の対象外だ。乳房のしこりや乳首からの出血がないかなど、自己検診(セルフチェック)が大切になるが、特に35歳未満で発症する若年性乳がんは発見が遅れがち。乳癌学会のデータによると、発症者は患者全体の2・7%未満と少ないが、過半数が2センチ以上の状態で見つかり、87%が自己発見だった。

 また、妊娠、出産、授乳期などで乳房の変化も大きく、乳腺炎などのトラブルもあり、異常に気付きにくい。

 中村教授は「授乳中に乳房にしこりが見つかったら、ミルクが乳腺に滞って固まる乳瘤(にゅうりゅう)の場合もあるが、まれにがんの場合もある」と指摘。助産師によるマッサージなどでもしこりが消えない場合は、乳腺専門医の受診を勧める。「専門医がエコーなどで診れば、すぐに判別できる。『まさか自分が…』と思わず、早めに受診してほしい」と話している。


引用元:
乳がん「マンモ」検診 乳房タイプ次第でエコー併用も(産経ニュース)