有毒な化学物質「ポリ塩化ビフェニール(PCB)」の血中濃度が高いと、男性の精子が減って不妊の原因になると、東北大の研究グループが発表した。PCBなどの「環境ホルモン」と不妊の関連を、実際に精子を観察して初めて明らかにした。

 東北大大学院医学系研究科の有馬隆博教授(情報遺伝学)らの研究グループは、不妊治療中の男性221人の精子と血中PCB濃度の関連を調査した。精子の数が正常な男性でPCB濃度が高い割合は30.9%だった。一方、精子が少ない男性の64.0%でPCB濃度が高い割合を示した。
 併せて研究グループは、受精の際に遺伝子の働きを制御する反応「メチル化」の異常と不妊の関連も調べた。
 精子数が正常の男性でメチル化異常が生じていたのは16.6%だったのに対し、精子が少ない男性では70.0%だった。メチル化異常の精子を持つ男性が体外受精をすると、妊娠しても出産に至らない割合が高くなった。
 有馬教授は「PCBの製造は中止されたが、自然界では分解されにくく、体内に少しずつ蓄積される。生まれてくる子どもの健康に影響する可能性もある」と指摘する。

 [ポリ塩化ビフェニール(PCB)] 有機塩素化合物で熱に強く、電気機器の絶縁体などとして広く使われていた。環境中で分解されにくく、人体に蓄積するとさまざまな健康被害を引き起こす。カネミ油症事件を契機に1972年に生産が禁止された後、未処理のまま約30年にわたって保管されていた。政府は2001年7月施行のPCB特別措置法で、16年までに処理を完了する計画を策定した。

引用元:
<東北大>PCB濃度、高いほど精子少なく(河北新報)