県最南部の公立病院「紀南病院」(御浜町阿田和)で、昨年四月から産婦人科が休診する非常事態が続いている。人口減少が続く県内で、へき地医療の充実は喫緊の課題。産婦人科は、医師のなり手が少なく問題が顕在化しやすい。医師の養成や派遣をする三重大(津市)は、地域で分娩(ぶんべん)を担う病院の「選択と集中」を推奨するなど、打開に向けた取り組みを強化している。
熊野灘を望む高台に立つ紀南病院は、県最南部の熊野市、御浜町、紀宝町の三市町の病院組合が運営する。三重大から派遣された産婦人科の男性医師二人が退職したため、昨年四月に産婦人科を休診し、再開のめどはたっていない。病院関係者は「このままでは産婦人科の看板を下ろさなくてはいけなくなる」と危機感を抱く。
「何かあった時に頼りになるのは総合病院。一刻も早く産婦人科を再開して」。八歳と六歳の子どもを連れて、紀南病院を訪れた御浜町の主婦(34)は訴えた。病院によると、この地方で出産する場合は、熊野市の民間病院か、車で三十分ほど離れた隣の和歌山県新宮市の公立病院まで行く必要がある。
「妊娠で体調が良くない時に長時間、車を運転するのは大変。もう一人産みたいけど…」。紀南病院で二人を産んだというこの主婦は困惑顔で言った。
昨年五月の伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)の舞台となり注目された志摩市でも、県立志摩病院の産婦人科で出産できないなど医師不足は深刻だ。
「いわゆる『3K職場』で、若い医師のなり手が少ないのが現状だ」。三重大大学院医学系研究科の池田智明教授(産婦人科学)は説明する。
夜中の出産にも備えるため、二十四時間態勢の当直も必要な産婦人科医は激務で、志す医学生は全体の4%ほどと少ない。約六十人の医師が在籍する医局のうち、半分の三十人が県内外の病院に派遣されて地域医療に従事したり、医療技術を磨いたりしている。
池田教授によると、県内の出産は年間約一万四千件。うち、紀南病院のある熊野地区は二百三十件。一方、名古屋通勤圏の桑名地区は十倍の二千三百件。隣の愛知県に越境して出産する人も多く、池田教授は「出産数の多い地区に、少ない人材を割り振らざるを得ない」と明かす。
一方、過疎が進む地域では、激しい医師の獲得競争が起きている。尾鷲市が運営する尾鷲総合病院は独自に産婦人科医一人を雇用し、複数の助産師とのチームで出産ができる態勢を整えている。
そんな中、当直勤務などの医師の負担を念頭に、池田教授が提唱するのは、出産できる病院の集約化と医師の共有化だ。「公立と民間の枠を超えて、必要な時に病院同士で産婦人科医を融通する仕組みづくりが急務だ」と話す。
実際に、いずれも四日市の市立四日市病院と県立総合医療センターで産婦人科の連携態勢を構築できたことから、池田教授は紀南病院のある県南部などでも病院間の連携を強化する必要性を訴えている。
引用元:
病院間の連携が急務 県南部、不足する産婦人科医(中日新聞)