高報酬を得ていた代理母たちから反発も

インドで盛んに行われてきた代理出産が近く法律で原則禁止となる。

新生児の引き取り拒否など、近年トラブルが相次いでいることを受け、政府が方針を決めた。だが、代理出産の報酬で貧困から抜け出したい代理母たちから反発の声も上がっている。

「多くの貧しい女性が夢を持てるよう禁止にしないでほしい」。インド西部アナンドの産科医院「アカンシャ病院」で、2回目の代理出産に備え、検診に訪れていたギタベン・パーマルさん(33)が訴えた。2014年に米国人夫婦の依頼で男児を出産し、夫の年収6年分を上回る48万ルピー(約81万円)の報酬を得た。2人の子を私立学校に入れ、貯金もできた。今度は家を新築するつもりだ。

7年前に離婚後、女手一つで息子2人を育てるミナ・パーマルさん(33)は初めての代理出産を前に、「近くの工場で月3000ルピー(約5100円)を稼ぐのが精いっぱい。息子らのために、また代理母になりたかったのに」とこぼした。

インドの代理出産は04年頃から急増。米国では1000万円以上とされる費用が100万ルピー(約170万円)程度と安く、英語も通じるとあって、欧米や日本などから依頼者が押し寄せた。年数千件に上ることもあったという。

だが、障害を持つ新生児や双子の片方の引き取りが拒否されるなどの問題も続出。人権団体などから批判が高まり、インド政府は15年11月、代理出産を扱う医院に外国人へのサービス提供の中止を指示した。

16年8月には代理出産を原則禁止する法案を発表。6月以降の国会で可決が見込まれており、可決から10か月後に施行される。インド保健家族福祉省のマノジ・パント保健調査局長は「女性や子供の権利を守るためだ」と強調する。

アカンシャ病院では04年から今年1月までに約900件の代理出産を扱った。15年11月以降、件数は半減したが、昨夏の法案発表後はインド人夫婦の駆け込み依頼が増えたという。

女性院長のネヤナ・パテル医師は「代理出産は適切に行われれば、代理母も依頼者も幸せにしてくれる。禁止によって地下ビジネスになってしまうのでは」と懸念する。一方、女性保護団体「全インド進歩協会」のカビタ・クリシュナン事務局長は「貧困が、女性に代理出産を事実上強いているという現状を改善することが重要」と指摘した。(インド西部アナンドで 田尾茂樹、写真も)

◆代理出産=不妊に悩む夫婦などの依頼で、体外受精した受精卵を代理母が自らの子宮に入れて出産すること。欧州各国などが禁じ、インドと並んで多くの外国人の依頼先だったタイも、2015年に商業目的の代理出産を法律で禁止した。日本では、日本産科婦人科学会が会告などで国内での代理出産を認めていないが、法的規定はない。


引用元:
インドで急増していた「代理出産」禁止へ(東洋経済オンライン)