■関連遺伝子異常で発症 高脂肪食や飲酒、喫煙が要因

 著名人の乳がんへの罹患(りかん)が相次いで公表されたことを受け、乳がんへの関心が高まっている。特に注目を集めているのは遺伝性乳がんのリスクだ。専門家は「家族にがん患者が複数いる場合、遺伝性のがんを発症する可能性がある。心配な人は専門機関に相談すべきだ」と話している。(大家俊夫)

                  


 著名人の罹患相次ぎ注目

 遺伝性乳がんの分野で世界的な研究者が、わが国にいる。乳がんの関連遺伝子「BRCA1」を発見した東京医科歯科大学難治疾患研究所の三木義男教授(分子遺伝学)だ。三木教授は米国留学中の1994年に同遺伝子を発見し、その名を世界にとどろかせた。続いて「BRCA2」も別の研究者によって発見され、遺伝性乳がんの研究が一気に加速した。その結果、「遺伝性乳がんは乳がん全体の5〜10%を占める」(三木教授)ことが判明した。

 「BRCA1」「BRCA2」は乳がんと卵巣がんにも関係する。本来はがんと闘う遺伝子ながら、このどちらかに異常があると、70歳ぐらいまでに乳がんは60〜70%、卵巣がんは20〜40%の確率で発症することも分かった。
この研究データを前向きにとらえたのが米女優アンジェリーナ・ジョリーさんだ。母親や母方の祖母が乳がんや卵巣がんで亡くなった家族歴を前提に、ジョリーさん本人にも、三木教授が発見した「BRCA1」の異常が確認された。30代後半だったジョリーさんは2013年、ほかのリスクも加味され、乳がんになる可能性は90%近くと診断され、両乳房の予防切除の手術に踏み切った。

 世界の研究者が解明急ぐ

 ただし、乳がんに関する遺伝子には未解明の部分も残っている。「BRCA1」「BRCA2」の異常による乳がん発症率は、「遺伝性乳がんの50〜60%」(三木教授)とされている。残りの部分については「候補遺伝子が30ほどまで絞られ、世界の研究者が解明を急いでいる」状況だという。

 日本で新たに乳がんを発症する人は1995(平成7)年は約3万人だったのに対し、2011(同23)年は約8万人へと急増。急増の背景には食の欧米化による高脂肪食が指摘され、飲酒、喫煙という要因も関係する。環境要因には妊娠・出産歴がない▽出産しても母乳を与えなかった▽初潮年齢が早い▽閉経年齢が遅い▽ホルモン療法を受けた−ことが挙げられる。こうした要因を持つ人が遺伝子に異常があると、発症リスクはさらに高まるという。
 「BRCA1」「BRCA2」の遺伝子の異常を調べる検査は日本では自費の扱い。検査を受けられる医療機関は増えつつあり、三木教授の所属する東京医科歯科大付属病院や聖路加国際病院、がん研有明病院、国立がん研究センターなどが知られている。ほかの地域でも大学付属病院などで検査を実施しているところもある。

 厚生労働省が推奨する乳がん検診は40歳以上が対象。それでも「家族にがんの発症者が多い場合、20代後半〜30代でも、遺伝要因によって乳がんを発症することがある」と三木教授は遺伝性乳がんへの正しい理解を呼びかけている。


引用元:
遺伝性乳がん「30代でも発症リスク」 遺伝子「BRCA1」発見者、三木義男教授が助言(産経新聞)