女性器が生まれつき存在しないというケースがあるすることをどのくらいの方がご存知でしょうか。
これは染色体によるものなのですが、女性器がない、ということは妊娠ができないということです。
そのような中、東京新聞で、以下のようなニュースが掲載されました。
<病気で子宮がない女性に第三者の子宮を移植する臨床研究を、慶応大のチームが今年中にも学内の倫理委員会に申請する検討をしていることが9日、関係者への取材で分かった。
(中略)
計画は、生まれつき子宮がない「ロキタンスキー症候群」の女性が対象。母親などの親族から子宮の提供を受け、3年間で5人程度での移植を目指す。移植を受けた女性は、体外受精させた受精卵を子宮に入れることで妊娠、出産が期待できる。>
今回は、医学博士である筆者が、このニュースについて考えてみたいと思います。


子宮移植は本当に安全なの?

実際子宮移植の例はあるものの、やはり安全性についてはまだまだ未知の部分が多いと言うのが現状です。
子宮に限らず、臓器移植はやはり拒絶反応などの問題点が出てきてしまうために、一概に安全であるとは言い切れません。

しかし妊娠できなかった方に対して妊娠が出来るようになるのは非常に喜ばしいことです。
安全性は未知の部分が多いのですが、移植の前にしっかりと検査を行うので、必ずしも拒絶反応が起こるとは言い切れません。
もし、子宮移植を考える方がおられるのなら、医師と入念な相談を行ってから考えてみたほうが良いと考えられます。

ただ、子宮移植の臨床研究は日本が世界初と言うわけではなく、2000年にサウジアラビアで行われたのが臨床応用があり、世界的には徐々に子宮移植も増えてきています。
研究が進めば、日本でも治療としての子宮移植が行われる日も来るのかもしれません。

「ロキタンスキー症候群」とは?
ロタンスキー症候群とは、原発性無月経と先天性腟欠損を主徴とする症候群で、出生女児5,000人に 1人の割合で発生する比較的まれな疾患です。
少々難しい表現をしておりますが、簡単に言ってしまうと染色体の問題で、生まれつき女性生殖器がない状態であると考えればわかりやすいかもしれません。
思春期を迎えても初潮が来ず、婦人科を受診することで初めて気が付くというケースが多いものです。
今回の臨床研究の計画は、生まれつき子宮がない「ロキタンスキー症候群」の女性らに、子宮を移植する、としています。
考えられるメリット・デメリット

やはりメリットとしては、今後この研究が進んでいくことで、これまで先天的な理由により妊娠が出来なかった、妊娠を諦めていたという方に対して妊娠ができると言う大きなメリットがあります。
実際に海外では子宮移植によって出産したケースも出てきているために、大きな希望になるということが考えられます。

しかし、やはり第三者の臓器を移植するわけですから問題点も出てきます。
デメリットとして考えられるのが、現段階においてはやはり拒絶反応が大きな問題となります。人間には生体防御機構が備わっているために、第三者の臓器を移植することで、それを“異物”とみなしてしまう可能性も否定できず、免疫反応が起きてしまうことがあります。
そうなると、免疫抑制剤によって免疫反応を押さえ続けなくてはなりません。

また、手術による肉体的・精神的な苦痛を伴う可能性も否定できませんので、しっかりと医師のみならず家族とも相談して考えていく必要性があります。

いかがでしたか?
まだまだ子宮移植自体は認知度が低いですが、今後応用されていく事で不妊で悩んでいたご夫婦に対して、大きな希望となることは間違いないと考えられます。

引用元:
臨床間近…「子宮移植」は本当に安全?医学博士が解説(日刊アメーバニュース)