目の錯覚「錯視」を起こす立体を数学的手法で簡単に作製することに、明治大の杉原厚吉特任教授が成功した。視点次第で形が変わり人目を引き付ける広告物の作製や、ドライバーが上り坂に気付かないまま減速して渋滞を起こすような道路の構造改善などへの応用が期待される。
錯視は物の形、色、動きなどを脳が処理する際に何らかの「誤解」が生じて起きると考えられている。版画家エッシャーの「無限階段」など、だまし絵と呼ばれる美術作品にも古くから取り入れられ、心理学などで研究されてきた。
平面画像から奥行きを判断するセンサーの研究をしていた杉原氏は、立体に関する錯視に着目。人の脳が網膜に映った画像を立体として認識する際、経験的になじみ深い形状を思い浮かべるため、実際の立体と食い違いが生じ錯視が起きることを突き止めた。
この現象を応用し、実際の立体と目に映る画像との“ずれ”を数式化した「数理モデル」を構築、錯視を起こす立体を理論的につくり出す手法を編み出した。エッシャーらが経験に基づき絵画的技法を駆使したのに比べ、より容易に作製できるという。
杉原氏は角度により重なり合って見える円柱や、高い位置のボールが低く見え、重力に逆らって転がるように見える作品を3Dプリンターなどを使って作製。2016年の世界ベスト錯視コンテストで準優勝となるなど「不条理の世界に迷い込む」(杉原氏)作品を生み出している。
注目を集めることが求められる広告分野での活用のほか、上り坂なのに下りのように見え「お化け坂」といわれる道路での自然渋滞解消などへの応用も考えられるという。
杉原氏は「本当の形を知っていても錯視は起こるのが面白いところ。理性を超えた視覚の働きを数学で解き明かしたい」としている。
引用元:
不思議「錯視」、数式化で手軽に作製 広告や道路改良に応用(西日本新聞 )