ノロウイルスの感染が全国的に拡大しているようです。各地で餅つき大会が(保健所の勧めで)中止になるなど、いろいろと混乱も起きているようですね。でも、完璧な感染対策を求めてゆくと、生活が維持できなくなりますし、そもそも続けられずに挫折しかねません。正しい知識のもと、できる範囲での対策を選択することが大切だと思います。

「感染症は国境を越えて」はここから
ノロウイルス、全国で警報 06年以来の最大級の流行

 

 まず、ノロウイルスについての基本事項。

 

 ノロウイルスに感染すると、1日か2日の潜伏期を経て、嘔吐(おう・と)や下痢、腹痛、発熱などで急性胃腸炎を発症します。通常は2、3日で軽快しますが、感染後2週間は便からウイルスを排出していると言われます(Mandell, Bennett, & Dolin: Principles and Practice of Infectious Disease, 6th ed.)。

 

 一度感染すると免疫が獲得されますが、その効果は半年ぐらいで低下し、2年後には完全に消失するとされます。また、いくつもの亜型があり、遺伝子型を変異させることもあるため、免疫で完全に防ぐことは期待できません。

 

 健康な人にとっては、水分を摂取しながら「寝てれば治る病気」なのですが、障害のある人や高齢者では、脱水がすすんで重症化したり、吐しゃ物を喉に詰まらせて窒息したりすることがあるので注意が必要です。また、嘔吐後には誤嚥性肺炎を続発することもあり、体力の衰えた人では下痢がおさまってからも見守りが必要となります。

 

 ノロウイルスの感染経路で、とくに厄介なのが、嘔吐物や排泄物が乾燥して飛散することによる空気感染です。伝統的な湿式清掃(水洗い、水拭き)であれば、乾燥させずに清掃できるので空気感染のリスクは高くありません。でも、現代は乾式清掃(ほうきで掃いたり、掃除機で吸引したり)をする家庭が一般的なので、嘔吐物や排泄物を洗い流すことができず、拭っても最後は乾燥させてまき散らしています。つまり、空気感染のリスクが高いのですね。

 

 というわけで、洗い流すという方法がとりにくい家庭では、汚染された嘔吐物や排泄物が乾燥して飛散する前に処理することが肝要です。

 

 家庭における具体的な手順は以下の通り。

 

 1)処理する人は使い捨ての手袋とマスクを着用する

 2)嘔吐物や排泄物をペーパータオルなどで静かに集めてビニール袋に入れる

 3)嘔吐物や排泄物で汚染された場所を次亜塩素酸溶液でひたすように拭き、その後、水で拭う

 4)使ったぺーパータオル、手袋とマスクはビニール袋に入れ、全体がひたる量の塩素系殺菌剤をかけてから、しっかり縛って廃棄する

 5)最後に流水と石けんでよく手を洗う

 

 【動画1】ノロウイルスを不活化できる塩素系消毒液の作り方

       https://youtu.be/w97BdqCSKmY別ウインドウで開きます

 

 【動画2】家庭でできるノロウイルスに汚染された嘔吐物の処理

      https://youtu.be/QjYGca_GaU8別ウインドウで開きます

 

 ※この処理方法は、家庭でできるシンプルな方法を例示したもので、完全に防ぐ方法を示したものではありません。目に見えている吐しゃ物だけでなく、もっと広範囲に飛散している可能性があることから、医療現場では使い捨ての袖付きガウンを着用しています。

 

 この他、家庭内で注意すべきノロウイルス対策として、次の2つのことがあります。

 

 まず、症状のある人が食事の準備に関わらないこと。他の家族に頑張ってもらったり、弁当を買ってきたりしましょう。どうしても症状のある家族が食事の準備をしなければならないときは、すべての手順においてマスクと手袋を着用し、加熱調理を原則とします。食器を共用しないことも大切です。症状のある人が箸をつけた惣菜を、他の家族が後から口にしないよう、あらかじめ取り分けておくようにしてください。

 

 次に大切なのは、こまめに手を洗うことです。とくにトイレの後には、石鹸を使って丁寧に洗います。風呂については症状のある人が最後に入るようにし、タオルは共用しないようにします。症状のある人がトイレや風呂を使用した後には、次亜塩素酸ナトリウム溶液で清拭した方がよいかもしれません。

 

 こうした対策の実施期間については、いまだ考え方は定まっていません。厳格な立場をとろうとすると、ウイルスが排出されている可能性のある2週間以上は続ける必要があることになってしまいます。

 

 でも、「ウイルスが含まれていること」と「他者への感染性があること」は必ずしも一致しません。米国CDCのガイドラインでは、ウイルス排出が「高水準」である期間は隔離を行うことが望ましいとし、その期間について「通常は症状が軽快した後の24〜72時間」という考え方を示しています。

 

 正直なところ、ノロウイルスの家庭内における感染を確実に防ぐことは不可能です。あまり厳格に考えすぎず、以上のことをヒントにして、現実的な範囲で家庭それぞれに対策していただくしかありません。それでいいんです。

 

 最後に・・・

 

 地域での餅つき大会は開催してもいいと私は思いますよ。そりゃ、保健所に相談すれば「やめといたら」と言うでしょうけどね。

 

 もし、ノロウイルスへの対策をしっかりされたいのなら、以下の3項目を守っていただければと思います。

 

 1)症状のある人や2週間以内に症状のあった人は参加を控える

 2)乳幼児や高齢者、基礎疾患のある人は餅を食べない

 3)餅を生ではなく、煮たり焼いたりと、加熱してから提供する


引用元:
広がるノロウイルス 家庭での感染対策とは? (朝日新聞)